福利厚生費とは?どんなものが含まれるのか具体例や条件を詳しく解説!

会社が従業員のために支払う費用のなかには、福利厚生費として計上できるものがあります。とはいえ、どのようなケースが該当するのかよく分からない担当者もいるのではないでしょうか。そこで、この記事では、福利厚生費の概要や満たす必要がある3つの条件、福利厚生費として認められる具体的な例などについて解説します。
目次
福利厚生費とは
福利厚生費とは、会社が従業員やその家族対して提供するさまざまなサービスにかかる費用のことです。さまざまなサービスとは、たとえば通勤手当や住宅手当、健康診断の費用補助、結婚祝い金などがあり、これらを福利厚生といいます。福利厚生費には、出張費のような業務に直接関係する費用や、給与・賞与は含まれません。
事業には関係なく、従業員同士のコミュニケーションの円滑化やモチベーションアップ、健康増進などを目的として実施される取り組みに対してかかる経費です。
福利厚生費には2種類ある

福利厚生費には「法定福利費」と「法定外福利費」の2種類あります。ここでは、それぞれについて解説します。
法定福利費
法定福利費とは、法律によって企業に義務付けられている「法定福利厚生」にかかる費用を指します。
法定福利厚生は「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険(40歳以上で加入)」「雇用保険」「労災保険」「子ども・子育て拠出金」の6つが対象です。会社はそれぞれの保険に従業員を加入させ、各保険料や拠出金を一定の割合で負担しなければなりません。従業員に対して法定福利厚生を行わなければ法律違反です。処罰を受けることがあるため、十分に注意しましょう。
労災保険料と子ども・子育て拠出金は会社が全額負担し、厚生年金保険料と健康保険料は会社と従業員で50%ずつ負担するのが一般的です。また、40歳になった従業員は介護保険に加入する必要があります。介護保険料も会社と従業員との折半です。なお、企業によっては、福利厚生の一環として健康保険料などを法的な割合より多めに負担しているケースもあります。一般に、現金給与の総額に対して会社が負担する法定福利費は15%程度です。
法定外福利費
法定外福利費は、「法定外福利厚生」を実施するのにかかる費用のことです。法定外福利厚生については特に法律上の規定はなく、各会社が独自に実施しています。それぞれが独自に取り組んでいるため、会社によって提供している法定外福利厚生の内容はさまざまです。多くの企業が導入している制度には、通勤手当・住宅手当の支給などがあります。また、退職金の支給も法定外福利厚生の一環です。
福利厚生が充実しているほど、従業員にとって魅力的な会社といえます。既存社員のモチベーションやロイヤリティの向上に貢献し、就職・転職希望者からは志望先として選ばれる可能性が高いでしょう。そこで、優秀な人材の確保を目指し、法定外福利厚生に力を入れている企業は珍しくありません。企業によって法定外福利厚生の充実ぶりには差があり、法定外福利費の内訳や金額にも大きな違いがあります。
【勘定科目】福利厚生費は消耗品費や交際費とはどう違う?

会社における日々の取引を正しく帳簿につけるためには、正確な勘定科目の記載が欠かせません。ところが、法定外福利厚生は企業が独自で設定できるため、福利厚生費の基準があいまいになりがちです。そのため、たとえば消耗品費や交際費のどちらに仕分けるべきかなどと迷うケ―スも少なくありません。そこで、ここでは勘定科目における福利厚生費と消耗品費・交際費の違いについて解説します。
消耗品費との違い
消耗品費とは、業務に必要なもので、繰り返し使うことでなくなる消耗性のある事務用品や備品を購入した際の費用を指します。
オフィスにある幅広い備品が消耗品にあたり、文房具類やコピー用紙などの事務用品、電球などの日用品、手袋やペンチなどの作業用品が該当します。
ただし、消耗品費として計上するには「耐用年数が1年未満であること」「取得価格が10万円未満であること」のいずれかの条件を満たすものでなければなりません。福利厚生費(法定外福利費)との違いは、消耗品費として計上できるのは必ず業務に必要なものである点です。福利厚生費の場合、業務に直接関係ないものでも条件を満たしていれば計上できます。
交際費との違い
取引先や得意先に対して、食事処などで接待・供応したりお歳暮や祝い品を贈ったりすることがあるでしょう。この場合にかかる費用は、交際費として計上します。交際費は、自社の事業に関連するものでなければなりません。ただし、現時点では取引がなく、将来的に得意先や取引先となることが見込まれる会社と食事をしたようなケースも交際費として認められます。さらに、飲食代だけでなく、送迎のために雇ったハイヤーの料金も交際費として計上可能です。
福利厚生費(法定外福利費)は自社の従業員のための制度や設備、報酬にかかる費用を指すものであり、他社に使う点で交際費とは大きく異なります。たとえば、同じ新年会でも自社の全従業員を対象に行った場合は福利厚生費であり、取引先を交えて行った場合は交際費として計上しなければなりません。
福利厚生費として経費計上するための3つの条件

福利厚生費は非課税のため、企業の税金対策としても有効です。ただし、従業員に向けて行ったサービスにかかった費用であれば、どのようなものでも福利厚生費として計上できるわけではありません。計上するためには、3つの条件を満たすことが必要です。条件を満たしていない場合は、内容に沿って消耗費や交際費として処理しなければならないため、注意しましょう。ここでは、福利厚生費として計上するための3つの条件について解説します。
すべての従業員が利用できる
福利厚生費として計上する必須の条件として、まずは「会社に勤めるすべての従業員が利用できるサービスであること」が不可欠です。
「広報部など一部の部署の社員のみが対象」「社内選考に通過した者だけが利用可能」といったサービスを提供する場合、それにかかる費用は福利厚生費として認められません。
金額が常識の範囲である
福利厚生費として計上できる金額は、「社会通念上常識的な金額にとどめる」必要があります。たとえば、新年会や忘年会と称して何度も宴会の席を設けたり、かなり豪奢な内容で実施したりした場合は、交際費とみなされる可能性があるため注意しましょう。
社内イベントや行事、社員旅行も費用の額が合理的な範囲に収まるものであれば問題ありませんが、豪華な海外ツアーといった費用がかかりすぎるものは認められません。
現金や換金性の高いものの支給ではない
「現金や商品券による支給ではない」ことも欠かせない条件です。従業員に対して直接現金を支給した場合は、福利厚生費としては認められません。たとえば、食費の補助とし現金を支給してしまうと、従業員の給与として扱われて課税対象となります。また、換金性の高い金券をわたした場合も福利厚生費として計上できません。
仮に、創業祝いで従業員に対して記念品を贈呈したとしましょう。この場合、「記念品としてふさわしいものを贈呈している」などいくつかの要件を満たしていれば、記念品購入にかかった費用は福利厚生費として計上できます。
一方、記念品の名目で商品券をわたしたり、記念品と商品券のどちらかを選べるようにしたりした場合は、福利厚生費として計上できなくなるので注意しましょう。
どんなものが福利厚生費になる?例を紹介!

法定外福利厚生の内容は企業によって好きに設定できるため、基準があいまいなところがあります。そこで、ここでは福利厚生費として計上できる具体例を紹介します。どのようなものであれば福利厚生費として計上できるのかを具体的に知っておくと、仕分けの際に参考になるでしょう。ただし、これから紹介するどの項目の費用も、無条件で福利厚生費として認められるわけではありません。一定の条件を満たしている必要がある点に留意してください。
交通費
従業員が会社に出退勤する際にかかる電車代やバス代、ガソリン代などを通勤手当として支給する場合は、福利厚生費として認められます。支給金額は、実際にかかる交通費全額でも一部でも構いません。自転車で通勤している従業員は交通費が発生しませんが、相当分を支給して福利厚生費として計上することも可能です。
ただし、いくらでも計上できるわけではありません。通勤に電車などの公共交通機関を利用している場合は、1カ月15万円が上限額です。自転車や自動車で通勤している従業員に支給する場合は、距離によって上限額が異なります。片道55km以上で最大となり、限度額は3万1600円です。また、片道2kmの場合は、交通費を支給しても福利厚生費として認められません。
慶弔見舞金
社内で定めた慶弔金支給規定に則って一時金を支給した場合も、福利厚生費として計上できます。慶弔金支給規定を定めずに慶弔見舞金を支給すると給与や賞与として扱われるため、注意しましょう。
なお、慶弔見舞金は、従業員やその家族が結婚したときや出産したとき、災害にあったときなどに支給することが一般的です。また、なかには誕生祝い金や成人祝い金、子どもの就学祝い金などを出している企業もあります。
上限額は定められていませんが、常識的な金額でなければ福利厚生費として認められない点にも注意が必要です。企業によって見舞金の金額は異なるものの、おおよその相場はあります。たとえば、従業員本人が結婚した場合や出産した場合の祝い金は1~3万円です。従業員本人が被災した場合の災害見舞金は、災害の程度にもよりますが、1~5万円といったところでしょう。
食事補助
従業員に食費を補助している場合も、福利厚生費として計上できます。食費の補助は、「社員食堂を設置して相場よりも安く食事を提供する」「宅配弁当を配布する」といった形になることが一般的です。
ただし、従業員の食事補助を福利厚生費として計上するには、「従業員1人あたり1カ月の補助金額が3500円以下(税抜)」「従業員負担が50%以上」の2つの条件を満たす必要があります。残業している従業員や深夜勤務の従業員に対して食事を提供した場合は、1食あたり300円(税抜)まで認められます。
なお、食事は現物で提供されていることが大切です。食事補助や食事手当の名目であっても、現金で支給している場合は給与とみなされ課税対象となるため注意しましょう。
健康診断
従業員が健康診断や人間ドッグを受け、その費用を会社が負担する場合も福利厚生費として計上できます。ただし、「健康診断や人間ドッグの費用負担はすべての従業員が対象であること」「費用が社会通念上妥当な金額であること」の2点を満たす必要があります。
たとえば、役職者以上のみを対象として健康診断の費用を負担した場合は、福利厚生費として認められる可能性は低いでしょう。また、何十万円もするような高額な人間ドッグを受けた場合も、認められません。一般的な金額で実施されているものであることが必要です。受診する医療機関によって健康診断の費用は異なりますが、一般には2万円程度が上限でしょう。
社員旅行
社員旅行や研修旅行を実施し、費用を負担したときも、一定の条件を満たせば福利厚生費として計上できます。条件とは、「旅行が4泊5日以内であること」「全従業員の50%以上が参加していること」の2点です。
たとえば、「慰安旅行として7泊9日でハワイ旅行に行った」「全社員の3割程度しか参加しなかった」といったケースでは、福利厚生費として認められません。なお、従業員が非常に多く、支店や部署単位で社員旅行を実施する会社もあるでしょう。その場合は、該当の支店や部署単位で50%以上の参加があったかどうかが判断の基準となります。
負担金額については特に決まりはありません。とはいえ、やはり常識的な範囲であることが大切です。一般には、1人あたり10万円までが妥当なところでしょう。
社内イベント
年末年始の忘年会や新年会、春の歓送迎会などの社内イベントを実施して発生した費用も、福利厚生費として計上できる場合があります。ただし、すべての従業員を対象に実施し、相当数の従業員が参加した場合でなければなりません。従業員が多く、支店ごとや部署ごとに開催する場合は、すべての支店・部署に開催の権利があることが前提となります。
「毎年、営業部や企画部など特定の部署のみ会社の費用で忘年会が実施されている」「役職者のみ参加している」といった場合は、認められないことがあるでしょう。また、かかった費用の額が常識の範囲を超えている場合も、認められないことがあります。金額に明確な決まりはありませんが、1人あたり5000円程度が妥当なところでしょう。
福利厚生費として計上できない費用とは?

従業員のために支給した費用であっても、内容によってはそもそも福利厚生費として計上できないものもあります。その場合は、別の費用として処理しなければなりません。ここでは、福利厚生費として計上できない代表的な費用を2つ紹介します。
給与・現物給与
従業員に対し、労働の対価として支払っている給与や賞与は、そのまま「給与」扱いです。現金ではなく現物で支給する場合は、内容によって福利厚生費となるものと給与となるものとがあります。
すべての従業員を対象としたものではなく、なんらかの理由で個人的に支給したものであれば、ほとんどが給与扱いとなるでしょう。このほか、業績アップや皆勤などを理由に褒賞として一時金を支給する場合も、業務にかかわるものであれば給与として計上します。
記念品・商品券
商品券などの金券も、換金性が高いことから現金以外で支給された給与として扱う必要があります。記念式典などで換金できない記念品を贈呈する場合でも、金額が高いときは給与扱いになる可能性があるため、注意しましょう。
「記念品としてふさわしいもの」「前回記念品を贈呈してからおおよそ5年以上の期間が空いている」といった条件を満たせば、福利厚生費として認められるケースもあります。
福利厚生費についてのよくあるQ&A

ここでは、福利厚生費に関してよくある質問を取り上げて解説します。
福利厚生費を経費として計上するメリットとは?
法定外福利厚生の費用を経費として計上し、福利厚生費として認められると、損金扱いで非課税対象となります。非課税のため、福利厚生費の分は税金を支払う必要がなく、節税対策として有効です。
従業員も、法定外福利厚生によってワークライフバランスの実現や労働環境の改善が可能になるうえ、税の負担も増えずにすみ、双方にメリットがあります。
福利厚生費を仕訳するときの注意点
かかった経費が福利厚生費として認められるためには、適切な勘定科目を用いて各費用を仕分ける必要があります。そのため、誰が見ても理解できるように、勘定科目は一般的な名称を用いることが大切です。
また、1度使った勘定科目は、同じ費用を仕分けるときに必ず使わなければなりません。勝手に変更することのないようにしましょう。
福利厚生費を計上して節税しながら働きやすい環境を整えよう!

福利厚生費は非課税対象のため、効果的な節税対策になります。従業員満足度やロイヤリティの向上にも寄与するでしょう。とはいえ、自社のみで充実した福利厚生の制度を整えることは簡単ではありません。心幸グループでは、はたらく人を元気にするさまざまな福利厚生サービスを提供しています。興味がある人は、一度問い合わせしてみてはいかがでしょうか。
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