はたらく人を元気にするウェブマガジン 福利厚生研究所 by SHINKO

年収160万で手取りはいくら?2025年から変わる「年収の壁」手取りを減らさずに働くポイント

年収160万で手取りはいくら?2025年から変わる「年収の壁」手取りを減らさずに働くポイント

年収160万で手取りはいくら?2025年から変わる「年収の壁」手取りを減らさずに働くポイントのアイキャッチ画像
更新日|2025年7月31日
所員|すずき
この記事の概要

こんにちは!福利厚生の強化や健康経営をサポートする心幸グループです。

パートやアルバイトで働く方は、所得税がかかるボーダーラインを意味する「103万円の壁」を考慮して勤務時間を調整している方が多いのではないでしょうか。2025年度からは、税制改正によりこの壁が「160万円の壁」として引き上げになり、その他にもさまざまな変更があります。

そこで本記事では、2025年度から引き上げとなる年収の壁について、年収160万円の場合の手取り額や手取りを減らさずに働くポイントについて解説します。

福利厚生/健康経営/意識調査等に関するお役立ち情報資料(無料)をダウンロードする〉〉

目次

年収160万の壁とは?

年収160万の壁とは、2025年の税制改正で基礎控除額と給与所得控除額が変更となることにより、所得税がかかる年収が従来の103万円から160万円となることを指します。

所得税は、基礎控除額と給与所得控除額を1年間の収入から差し引いた額に税率を掛けて算出します。これまで、基礎控除額は48万円、給与所得控除額は55万円だったため、年収103万円を超えた場合に所得税がかかっていました。

2025年の税制改正では、基礎控除額と給与所得控除額の両方が引き上げとなり、合計で160万円となります。そのため、所得税がかかるボーダーラインが年収160万以上となるのです。

パートやアルバイトとして働いている方は、所得税がかからない年収の範囲内で働いているケースが多いのではないでしょうか。所得税がかからない範囲内で働いていれば、配偶者や親族の扶養内で収められ、社会保険に加入する必要もなく、扶養者が扶養控除を受けられるメリットもあります。

ところが、年収の壁が引き上げとなることによって、扶養内で働きたい方や短時間で勤務している方は働き方を変える必要が出てくる可能性が出てきます。

非課税ラインが引き上げとなった経緯

2024年12月の税制改正大綱では、年収の壁を103万から123万に引き上げる方針でした。しかし、その後の協議の結果、123万円からさらに年収160万円まで引き上げる修正案が採用となり、2025年の税制改正で所得税の課税最低額、つまり非課税ラインが160万円となりました。

なぜ非課税ラインが引き上げとなったのかというと、人手不足や働き控えの解消が目的とされています。年収103万円以内に収めるために労働時間を控える労働者が多いことが、労働力不足の原因の一つでした。

そこで、労働力確保とともに働きたい人がもっと働ける環境を整備することで、給与引き上げや物価高対策も兼ねた対策として、非課税ラインが引き上げとなりました。

いつから年収160万円の壁が適用になる?

非課税ラインが160万円になるのは、所得税については2025年度、住民税は翌年の2026年度からです。つまり、今年の収入から非課税ラインが変更となります。

2025年度からの変更点

2025年度からは、所得税がかかるいわゆる「年収の壁」が引き上げとなるだけではなく、その他の控除に関しても引き上げや新設などの変更があります。

基礎控除の引き上げ

2024年度までは所得金額2400万円まで48万円でしたが、前述した通り、2025年度以降は所得金額2350万円以下の場合の基礎控除額が58万円に引き上げとなります。所得金額2350万円超2400万円以下の場合の基礎控除額は、2024年度と変更はありません。

さらに、期間限定で所得金額に応じて後述する加算が上乗せされます。

参考/国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」

給与所得控除の最低保障額の引き上げ

給与所得控除も、2025年度から見直しとなります。2024年度まで55万円だった給与所得控除額の最低保障額は、2025年度以降65万円に引き上げられます。

この給与所得控除の最低保障額65万円と引き上げられた基礎控除の合計160万円が、「年収160万の壁」と呼ばれる所以です。

参考/国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」

特定親族特別控除の新設

2025年度から新設される控除が、特定親族特別控除です。

特定親族とは、生計をともにしている扶養している家族が19歳以上23歳未満の親族のことで、特定親族の合計所得金額が58万円超123万円以下の場合に新たな控除が適用となります。対象となる親族の年齢からもわかるように、主に大学生にあたる年代の子供を持つ親の負担軽減を目的とした制度です。

特定親族特別控除では、年末調整の際に給与所得者の特定親族特別控除申告書を提出することで、特定親族1人あたり最高63万円までが控除となります。

なお、特定親族特別控除も所得金額に応じて変動します。年収が123万円超150万円以下の場合は最大額の63万円が控除となりますが、150万円超155万円以下の場合は61万円、155万円超160万円以下で51万円と、年収が5万円増えるごとに控除額が下がります。

参考/国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」

低中所得者は2年間限定で基礎控除に上乗せあり

低中所得者の基礎控除額は、2年間限定で上乗せとして特例加算額がプラスされます。上乗せ加算が2年間限定となったのは、物価上昇が賃金上昇に追いつくまでの措置であること、年収200万円超、850万円以下の場合、配偶者控除や配偶者特別控除の対象外となることが理由です。2年後の措置についてはまだ未定ですが、2027年度までは低中所得者に限り基礎控除がさらに引き上げられます。

具体的な引き上げ額は、以下の通りです。

・年収132万円以下:37万円
・年収132万円超336万円以下:30万円
・年収336万円超489万円:10万円
・年収489万円超655万円以下:5万円

このうち、年収132万円以下で加算される37万円は恒久措置となります。年収655万円超の場合、特例の加算はありません。

年収160万の壁で手取り額は増える?

これまでよりも基礎控除額が引き上がると、気になるのは手取り額への影響ではないでしょうか。住民税が非課税となる額が年収103万円から160万円に引き上がると、単純計算で57万円手取りが増えるのでは、と考えがちです。しかし、実際は控除額が増えた分手取りが上がるわけではありません。その理由は、社会保険の加入対象額に変更がないからです。

社会保険の加入対象額は年収106万円、国民年金・国民健康保険の加入対象額、いわゆる「社会保険の壁」は130万円です。非課税ラインが引き上げられても、この社会保険の壁は変更となりません。

勤務先企業の従業員数が51人以上、月額賃金8万8000円以上などの条件はありますが、該当する企業でパート勤務していた場合、2025年の税制改正後の非課税ラインギリギリまで働こうとすると、扶養を外れて社会保険への加入が必要となります。そのため、年収が106万円~123万円程度になると社会保険料が徴収されてしまいます。

2025年度以降は、所得税がかかる年収額が引き上がった分、従来よりも勤務時間を増やして年収をアップできます。しかし、所得税がかからない範囲内で働いていても社会保険料の負担がかかり、結果的に手取り額が減ってしまう事態も想定されるのです。

パートは「働き損」になる?

年収の壁が引き上がっても年収が上がるとは限らず、年収によっては逆に手取りが下がる可能性があるため、税制改正後にパートとして働くのは「働き損」になるのでは?と感じられるかもしれません。そこで、年収別でどのような変化があるのか、例を挙げていきましょう。

年収130万円以下の場合

前述したように、基礎控除額が変更になっても社会保険の加入対象額は変更されず、年収130万円を超えると扶養から外れて社会保険への加入が必要となります。厚生年金保険料と健康保険料の支払いによって、手取り額が減ることが予想されます。

年収130万円の場合の社会保険料の目安は1年間でおよそ19万円、手取り額はおよそ109万円です。社会保険料が天引きされるので、社会保険の壁を超えない年収120万円よりも手取り額が減る恐れがあります。

年収150万円以上の場合

年収150万円以上は、配偶者特別控除が減額される額です。配偶者特別控除とは、配偶者に48万円を超える所得がある場合に受けられる控除で、配偶者と納税者の所得金額によって控除額が変わります。

配偶者特別控除は年収150万円以上で年収に応じて控除額が減額となり、年収が約201万円で控除適用外となります。

年収150万円の場合の1年間の社会保険料はおよそ22万円、手取り額はおよそ123万円です。年収130万円を超えた時点で手取り額が減りますが、年収150万円を超えれば手取り額は増えます。

年収160万円以上の場合

年収160万円の壁を超えて働いた場合、年収130万円以下、年収150万円以下の場合と同様に社会保険への加入が必要です。配偶者特別控除の控除額も年収200万円まで適用にはなるものの、控除額が減額となります。

年収160万円の場合の1年間の社会保険料はおよそ23万円、手取り額はおよそ131万円です。このラインを超えると手取りが減ることはないので、働いた分手取り額は増えます。

年収160万円のパート勤務が決して損ではない理由

パートで年収160万円を得ていた場合、配偶者特別控除も年収の多さに比例して減額されます。扶養を外れて社会保険への加入も義務となるため、負担が増えて「働き損」と感じられる方がいるかもしれません。しかし、年収160万円のパート勤務は、決して損ばかりではありません。以下のようなメリットもあります。

社会保険に加入できる

パート勤務でも、年収160万円に達すると配偶者の扶養から外れて社会保険への加入が義務付けられ、給料から社会保険料が天引きされます。

毎月社会保険料が引かれると手取り額が減るため損をする、とデメリットに考えてしまいがちです。しかし、厚生年金に加入することによって保険料に応じた上乗せ額を受け取れるので、将来の年金額が増えるメリットがあります。

また、社会保険への加入で産休中の出産手当金、ケガや病気の際に受け取れる傷病手当金など、国民健康保険では利用できない制度の利用が可能となります。

毎月社会保険料を天引きされますが、社会保険へ加入していれば国民年金、国民健康保険よりも手厚い社会保障が受けられる点が大きなメリットです。

世帯年収がアップする

パートの年収が160万円あれば、世帯年収がアップする点もメリットです。年収が上がることによって扶養者にかかる税金が上がることはあるものの、年収103万円よりも手取り額は増えるので世帯年収アップが期待できるでしょう。

世帯年収がアップすれば、将来に備えた貯金を増やせたり、子供の教育にかけるお金を増やせたりするなど、家計の安定につながります。また、住宅購入を検討している場合は住宅ローンの借入額がアップする可能性もあるため、将来的な資産形成に関しても大きなメリットが得られるでしょう。

福利厚生を利用できる

勤務先の企業や雇用形態、雇用条件などにもよりますが、パート勤務でも福利厚生が利用できることが多いのもメリットです。

勤務先の福利厚生を利用できれば、食事補助や健康診断にかかる費用の補助やフィットネスクラブやレクリエーションの割引など、さまざまな制度を利用できます。福利厚生を活用すれば、通常すべて自己負担だった支出の一部を勤務先企業が補助してくれるので、家計の節約にもつなげられるメリットもあります。

働き損を防ぐには

年収の壁が引き上げになるため、年収160万円までの範囲内で働こうとしても、同じ働き方でも税や社会保険料の負担が増えてしまっては働き損になる可能性がある点に注意が必要です。パートやアルバイトで働き損を防ぐには、以下の年収を目安に勤務時間や働き方を調整してみましょう。

扶養内に収めるなら年収106万円未満に抑える

年収130万円を超えると、所得税や住民税が課税となる上に社会保険への加入義務が発生するので、手取りが減る恐れがあります。手取りを増やそうと勤務時間を増やして132万円を超えると基礎控除の上乗せ分が減るので、負担が増える可能性もあるでしょう。

社会保険への加入はさまざまなメリットが得られますが、従来通り扶養内に収めたい場合は、年収を106万円未満に抑えましょう。

年収130万円を超える場合は150万円以上を目指すことで手取り増

年収130万円~150万円は、上記のように所得税に加えて住民税、社会保険料の負担が発生します。さらに基礎控除の上乗せ分も減るので、働き損に陥りやすい年収といえます。

もし年収が130万円~150万円になる場合は、年収150万円以上を目指してみましょう。社会保険料の負担が増えて配偶者特別控除は減額となりますが、年収そのものをアップすることで手取りを増やすことが期待できます。

年収の壁を気にせずに働く

年収160万円の壁の範囲内で働いたとしても、年収130万円以上は扶養を外れなければならず、手取り額も減ってしまう可能性があります。同じ扶養を外れるのであれば、年収の壁を気にせずに働くのも一つの方法です。

年収160万円を超えれば、働いた分手取りを増やすことが可能なので、年収200万円を目標に稼いでもいいでしょう。

パートで働く際は働き方や配偶者の年収も考慮しましょう

年収160万円の壁が大きく影響するのは、主にこれまでパートとして扶養の範囲内で働いていた方々です。基礎控除額が引き上げになったとしても、社会保険の加入対象額はこれまでと変わらないため、2024年以前と同様に扶養内で働く場合は、働き方や勤務時間を検討して年収を106万円未満に収めることが必要です。

2025年度からの年収の壁引き上げに合わせて働き方を見直し年収がアップすると、社会保険への加入が必要となったり、配偶者控除の減額になったりすることがあります。しかし、配偶者の年収とトータルで見るとプラスになることが多いでしょう。

年収の壁が引き上げになることにより、パートで働く方は現状維持か年収アップを目指すかで、働き方が変わる可能性があります。場合によっては、フルタイム勤務を目指した方が年収アップも目指せるので、配偶者の年収と併せて働き方を見直してみましょう。

まとめ

2025年度に年収の壁が160万円に引き上げられますが、単純に引き上げ分が手取りにつながるわけではありません。手取りが大幅に増えたり極端に減ったりすることはないものの、年収の壁が引き上げとなることによって扶養内で働ける年収額は引き上げになります。

その一方で、社会保険の対象となること、配偶者控除や配偶者特別控除の対象外となることによって負担が増え、結果的に「働き損」となるケースも考えられますが、年収160万円で働くことにもさまざまなメリットが期待できます。

2025年度は、パートやアルバイトで働く方にとっては税制改正によってこれまでとは異なる働き方の見直しが必要となるかもしれません。働き損を防ぐためにも、手取り額が減らない働き方を検討してみましょう。

福利厚生の強化や健康経営をサポートする心幸グループのお問い合わせはこちら>>

メルマガ会員登録

メルマガに登録して、
最新の情報をキャッチ!

  • 福利厚生研究所の記事更新のお知らせ
  • 福利厚生や健康経営のおすすめ情報
  • 心幸グループ(運営元)のキャンペーン情報
  • 健康経営サポートオンラインセミナーのご案内 等

メールのアイコンMAIL MAGAZINE

    メールアドレス*