通勤手当の非課税限度額改正で考えられる影響は?改正ポイントや企業が行うべき対応を解説
こんにちは!福利厚生の強化や健康経営をサポートする心幸グループです。
2025年の所得税法施行令で、2026年度からの通勤手当の非課税限度額が改正され、一部引き上げとなりました。本記事では、通勤手当の基本をはじめとして、非課税限度額が引き上げになった経緯や従業員・企業への影響、企業が行うべき対応などについて解説します。
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目次
そもそも通勤手当とは?

通勤手当とは、従業員の自宅から勤務先までの通勤にかかる費用を、企業が手当として支給するものです。通勤手当は法律で支給が定められていない法定外福利厚生であるため、すべての企業で導入されているものではありません。
法定外福利厚生とはいえ、通勤手当を支給している企業は多く、厚生労働省が実施した2025年度の就労条件総合調査によると、通勤手当を支給している企業は全体で90.2%と、高い割合です。この調査からも、通勤手当は非常にポピュラーな福利厚生であるといえます。
通勤手当には、電車やバスなどの公共交通機関の乗車費用のほか、自動車を利用した際のガソリン代が含まれます。一般的に、公共交通機関の場合は運賃✕勤務日数、または定期券代、自動車の場合は、ガソリン単価と燃費から、移動距離と勤務日数を算出して支給するのが一般的です。
通勤手当の非課税限度額とは
通勤手当は、一定額内であれば非課税として取り扱われます。国税庁では、通勤手当を以下の4種類の区分に分けています。
1.交通機関又は有料道路を利用している人に支給する通勤手当
2.自動車や自転車などの交通用具を使用している人に支給する通勤手当
3.交通機関を利用している人に支給する通勤用定期乗車券
4.交通機関又は有料道路を利用するほか、交通用具も使用している人に支給する通勤手当や通勤用定期乗車券
これら4種類の区分それぞれで、異なる非課税限度額が適用されます。自動車・自転車通勤にあたる上記2は移動距離によって非課税限度額が変動します。
上記1、3の場合は1ヶ月あたりの合理的な運賃、4の場合は後述する自動車・自転車通勤の場合の金額と1ヶ月あたりの合理的な運賃の合計額で、いずれも最高15万円までが非課税限度額です。
なお、非課税限度額を超えた額の通勤費用がかかった場合は給与として扱われ、課税対象となります。
参考/国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」
国税庁「No.2508 給与所得となるもの」
通勤手当と旅費交通費の違い
企業が従業員に対して支払う費用として、通勤手当とよく似た「旅費交通費」というものがあります。これらは一見似通っている費用ですが明確な違いがあり、異なる費用として分類しなければなりません。
通勤手当は、従業員がオフィスへ通勤する際にかかる交通費を、給与に上乗せして支給します。法定外福利厚生にあたるため、支給する義務はありません。非課税限度額に合わせて上限を設定している企業もあれば、一部のみ支給する企業もあります。非課税限度額を超えた場合は給与所得として取り扱われ、課税対象となります。
一方、旅費交通費には従業員の出張や営業活動時にかかる交通費や宿泊費、出張手当などが含まれます。つまり業務に必要な経費のひとつで、業務内容などによって費用が変動します。旅費交通費としてかかった費用は領収書から経費として精算する必要があり、企業に支給が義務付けられている点、原則的に課税対象外となる点も、通勤手当と異なる点です。

通勤手当の非課税限度額が2025年11月より引き上げに

2026年11月19日、所得税法施行令が改正となったことにより、一部の通勤手当の非課税限度額が引き上げとなりました。まずは、なぜ今回非課税限度額が引き上げとなったのか、その理由と背景から解説します。
引き上げとなった経緯
通勤手当の非課税限度額引き上げとなった背景には、近年の物価高とガソリン価格の高騰があります。近年の円安や原油高などにより、ガソリン価格は高騰しています。その影響で、これまでの非課税限度額をオーバーするケースが少なくなかったようです。
通勤にかかるガソリン代が非課税限度額を超過した場合は当然ながら課税対象となるので、特に自動車で長距離通勤を行っている従業員にとっては、ガソリン代が負担となっていました。そのため、今回の法改正では物価上昇やガソリン価格の高騰といった現状を踏まえて、引き上げが行われました。 また、通勤手当の非課税限度額引き上げで経済的な負担を軽減して、政府の物価高対策と連動させることで、企業で働く人の実質的な手取りを増やすことも、今回の法改正の目的のひとつとされています。

通勤手当非課税限度額の改正ポイント

2025年11月の通勤手当非課税限度額は、すべての通勤手当に適用される訳ではない点に注意が必要です。そこで、今回の改正ポイントをまとめました。
自動車・自転車通勤に限定
今回の通勤手当の非課税上限額引き上げは、前述した通勤手当の区分のうち「自動車や自転車などの交通用具を使用している人に支給する通勤手当」の一部にのみに行われます。
電車やバスなどの公共交通機関を利用している人、公共交通機関と自動車を併用している人に加えて、移動距離が短い自動車・自転車通勤の人も、非課税限度額の引き上げ対象外です。
2025年4月1日以降の通勤手当に適用
今回の通勤手当の非課税限度額引き上げは2025年11月に施行されましたが、国税庁では「令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当に適用」としています。つまり、2025年4月以降に支給された通勤手当にさかのぼって適用されるということになる点が、注意するべきポイントです。
注意したいのが、通勤手当を先払いしているケースです。非課税限度額の引き上げは支給日が2025年4月以降となるため、例えば4月分の通勤手当を3月に支払っていた場合は、適用されません。あくまでも、支給日が基準となります。
参考/国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げに関するQ&A」

改正後の通勤手当の非課税限度額

自動車・自転車通勤者の通勤手当の非課税限度額は、従来通り通勤距離に応じた額となります。2025年度以降は、以下のように非課税限度額が引き上げられます。
| 通勤距離 | 改正後 | 改正前 |
| 片道55km以上 | 3万8,700円 | 3万1,600円 |
| 片道45km以上55km未満 | 3万2,300円 | 2万8,000円 |
| 片道35km以上45km未満 | 25,900円 | 24,400円 |
| 片道25km以上35km未満 | 19,700円 | 18,700円 |
| 片道15km以上25km未満 | 13,500円 | 12,900円 |
| 片道10km以上15km未満 | 7,300円 | 7,100円 |
| 片道2km以上10km未満 | 4,200円(変更なし) | 4,200円 |
| 片道2km未満 | 全額課税(変更なし) | 全額課税 |
法改正後も従来と同様に片道2km未満の場合に非課税限度額はありません。そして、片道2km以上10km未満の場合も変更はないため、通勤距離が片道10km以上の場合のみ、通勤手当の非課税限度額が引き上げとなります。

通勤手当の非課税限度額引き上げによって考えられる影響

通勤手当の非課税限度額が引き上がると、従業員はもとより企業にも影響が及ぶ可能性があります。では、具体的にどのような影響が予想されるのでしょうか。
従業員への影響
前述したように、2025年の法改正による通勤手当の非課税限度額引き上げの対象は、自動車または自転車通勤者のみです。公共交通機関のみを利用して通勤している従業員への変更はないため、影響もほぼないといえるでしょう。また、今回の改正は片道10km以上で引き上げが行われるため、自転車通勤を行う従業員でも対象外となるケースが多いと予想されます。
一方で、遠方から自動車通勤をしていて、これまで非課税限度額を超える通勤費がかかっていた人の場合は、今回の法改正によって課税対象額が引き上がることから、手取り額がアップすることが考えられます。
企業への影響
従業員への影響は、長距離の自動車通勤を行う場合は比較的良い影響とみられますが、企業にとっては人事や労務が対応すべき業務が増える可能性があるでしょう。
すでに2025年の年末調整は終わっているため、中に2025年4月1日以降までさかのぼっての通勤手当の精算は終わっているはずです。しかし、通勤手当の額は非課税限度額に合わせて設定している企業が多いものです。そのため、非課税限度額が引き上げとともに通勤手当も引き上げる場合は、就業規則の見直しも必要となるでしょう。

通勤手当の非課税限度額引き上げで企業に求められる対応

通勤手当の非課税限度額の引き上げに伴い、企業に求められる対応には、以下の3点があります。
2025年4月1日以降の差額分の計算・遡及精算
今回の法改正で、通勤手当の非課税限度額の引き上げは4月1日以降から適用されることから、半年以上前までさかのぼって精算する必要がありました。しかし、すでに2025年分の年末調整は終わっているため、現時点では差額分の計算や遡及精算は対応済みとなっているはずです。
なお、年の途中で退職した者については企業が精算手続きを行うのではなく、退職者本人が確定申告で行い、還付を受けることとなっていました。
給与システム等の見直し
非課税限度額に合わせて通勤手当を設定しており、今回の引き上げに併せて通勤手当も引き上げる場合、給与計算方法に変更が生じます。すでに新年度に入っていることから、既存の給与システムを利用しているのであれば、各システムで法改正への対応が済んでいるはずですが、新たな額で計算できるかどうか、改めて設定の見直しを行う必要があります。
また、通勤手当に変更が生じるとなると、前述したように就業規則の変更を行わなければならないため、就業規則も見直しましょう。
従業員への説明
通勤手当の変更が生じる場合、実際に利用する従業員への周知も必要です。今回の変更は、公共交通機関の利用者には変更がないため、法改正に合わせて通勤手当を引き上げる場合、一部の自動車通勤者のみ引き上げとなる印象があり、不公平感を持たれる可能性があるからです。 不公平感や不満を持たれることを防ぐためにも、なぜ今回通勤手当が引き上げとなるのか、引き上げ対象が限定されているのかを、法改正の内容とともに従業員へ説明しましょう。

福利厚生も手取りアップにつながる従業員支援の一策

企業が従業員へ提供する福利厚生である通勤手当の非課税限度額の引き上げは、通勤にかかる費用を軽減し、手取りアップにつなげることを目的のひとつとしています。
2025年の法改正では引き上げ対象となるのは自動車通勤、かつ片道20kmの場合にはなっていますが、近年の物価上昇やガソリン価格高騰によって通勤手当を超過したガソリン費用を負担していた方にとっては、手取りアップ効果が期待できるでしょう。
通勤手当以外の福利厚生の充実も、手取りアップにつながる従業員支援の一策となるのはもちろん、生活支援にもつながります。心幸グループでは、食事や健康など、多彩な福利厚生サービスで従業員をサポートしています。
中でも注目なのが、置き社食サービス「オフめし」です。オフめしは、オフィスの空きスペースに専用の冷蔵庫や棚を設置するだけで導入できる福利厚生サービスで、常温・冷蔵・冷凍の3温度帯に対応した約800種類の商品を取り揃えています。おにぎりやパン、カップ麺といった軽食だけでなく、丼ものや惣菜、健康を意識したメニューまで幅広く選べるため、その日の気分や勤務形態に合わせて利用できる点が特徴です。
また、24時間いつでも利用できるため、夜勤やシフト勤務のある職場でも導入しやすく、「近くに飲食店が少ない」「忙しくて昼食を買いに行けない」といった課題の解決にもつながります。社員食堂のような大規模設備が不要で、1名規模の企業から導入できる手軽さも魅力です。さらに、2026年4月からは食事補助の非課税限度額が月額3,500円(税抜)から7,500円(税抜)へ引き上げられたことで、企業はこれまで以上に食事支援を福利厚生として導入しやすくなりました。
食事手当は通勤手当と同様に、非課税制度を活用することで従業員の実質的な手取りアップにつながる福利厚生のひとつです。従業員支援の一環として福利厚生の導入・見直しを検討するのであれば、心幸グループへぜひご相談ください。
関連記事/福利厚生の食事補助非課税上限額が引き上げに!対応の際の注意点を解説

まとめ
2025年の法改正により、自動車通勤をする従業員を対象とした通勤手当の非課税限度額が一部引き上げとなりました。これにより、従来と比較しても現在の物価やガソリン税に即した通勤手当の支給が可能となるでしょう。従業員にとっては、課税対象となる非課税限度額超過分の自己負担の減少につながり、手取りアップ効果も期待できます。また、非課税限度額の引き上げに伴い、企業が通勤手当を拡充することも望めるでしょう。
しかし、今回の法改正は自動車通勤者の一部のみが対象であることから、自転車通勤者や公共交通機関のみの利用者、または公共交通機関と自動車、自転車を併用する従業員が不公平と感じ、不満につながる可能性が考えられます。そこで通勤手当の拡充とともに、食事や生活をサポートする他の福利厚生を充実させて、従業員の満足度をアップさせてみてはいかがでしょうか。
関連記事/マイカー通勤者の通勤手当を計算するには?支給方法や不公平感をなくすための対応を解説
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