物流の2026年問題とは?改正物流効率化法で義務化される対応と7つの成功ポイントも徹底解説
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物流の2026年問題とは、「物資の流通の効率化に関する法律(以下より「物流効率化法」)」の法改正に伴い、特定事業者に対応義務が課される問題のことです。
具体的には、特定事業者は中長期計画の作成・提出や取り組み状況の定期報告など、いくつか対応しなければなりません。
これらの2026年問題への対策が遅れると、物流コストの上昇や業務プロセスの再構築など、業界全体に大きな影響を及びかねません。
そこで本記事では、2026年問題の対応義務から効果的な7つの対策をわかりやすく解説します。
2026年問題への対策を効果的に実施したい、物流の効率化・最適化を図りたい企業の担当者は、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
物流の2026年問題に関する基本情報

物流業界は、時間外労働が制限される2024年問題に続き、特定事業者に義務が伴う「2026年問題」への対応が急務となっています。
ここでは、物流業界が直面している2026年問題に至るまでの背景や、特定事業者に該当する企業の基準を解説します。
物流効率化法改正で2026年4月から特定事業者にいくつかの対応義務が発生
物流の2026年問題とは具体的に、物流効率化法の改正により、2026年4月1日の施行日から一定の基準を満たす特定事業者に対して、複数の対応義務が課されることです。
実際、物流効率化法では主な最終目標として、以下の達成を目指しています。
| 令和10年度(2028年度)までの最終目標 | 説明 |
| ドライバーの待ち時間・作業時間を減らす | ・ドライバー1人あたりの年間荷待ち・荷役時間を125時間短縮する ・現在、合計約3時間かかっている荷待ち・荷役時間を、全国平均で2時間以内にする ・荷主の努力目標として、1回の受け渡しにつき、原則1時間以内(最大でも2時間を超えない)を目指す |
| トラックの積み荷を増やす(積載効率を向上させる) | ・現在40%以下の積載率を車両全体で44%まで引き上げる ・特定車両については、全体の5割のトラックで積載率50%を目指す ・重さだけでなく、荷物のかさ(容積)も考慮して効率よく積み込む |
これらの目標達成に向けて法改正では、特定事業者に対して物流改善に向けた中長期計画の作成・提出や、統括管理者の選任などが求められています。
したがって、2026年問題は運送企業だけではなく、荷主を含む物流業界全体での取り組みが不可欠となっています。
2024年問題から2026年問題に至るまでの背景
物流の2024年問題が発生して、短い期間で2026年問題への対応が求められる背景には、ドライバー不足と労働時間の規制強化が挙げられます。
そもそも2024年問題とは、働き方改革関連法により2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働が年間960時間に制限されたことで発生する課題のことです。
実際、2024年問題によって2030年には、全国で約35%の荷物が運べなくなると試算されています。
2024年問題の対策として、運送業者が積載効率を上げたり荷待ち時間を削減したりしましたが、効果に限界がありました。
したがって、物流の持続的な成長を図るために、今回の法律改正で「荷主や倉庫事業者などの関係事業者」にも焦点を当てました。
これにより、物流の効率化に関する責任を課す必要が生じたのが2026年問題となります。
特定事業者に該当する企業の基準
2026年問題により新たに対応義務が課される「特定事業者」に該当する企業の基準は、荷主と物流事業者でそれぞれ以下のとおりです。
| 業者区分 | 基準 | 対象規模の目安 |
| 特定荷主・特定連鎖化事業者 | 年間の取扱貨物重量が9万トン以上 | 上位3,200社程度 |
| 特定貨物自動車運送事業者等 | 保有車両台数が150台以上 | 上位790社程度 |
| 特定倉庫業者 | 年間の貨物保管量が70万トン以上 | 上位70社程度 |
対象は製造業や卸売業をはじめとした物流量が多い大手企業で、年間9万トン以上を扱う約3,200社の荷主企業が中心となります。
このように、他の業者区分と比較して対象規模が多いことから、主に荷主企業が最も大きな影響を受けるといえます。

物流の2026年問題で特定事業者に求められる5つの対応義務

物流の2026年問題は、物流効率化法の改正によって、大規模な特定事業者に対して新たな義務を課す課題のことです。
ここでは、国土交通省の「「物流効率化法」理解促進ポータルサイト」や「新物効法の施行について」に基づき、特定事業者に求められる代表的な5つの対応義務を一覧で解説します。
・貨物重量の届出と情報管理の徹底
・物流統括管理者(CLO)の選任
・中長期計画の作成・提出
・物流効率化の取り組み状況を定期報告
・取り組み不足の場合は罰則・行政指導への対応
特定事業者は、これらの対応義務を理解したうえで体制を整えましょう。
貨物重量の届出と情報管理の徹底
国が物流の全体像を正確に把握するため、特定事業者は年間の貨物重量について、事業所管大臣(運送業は国土交通大臣)へ届け出ないといけません。
改正法では、「年間9万トン以上」の貨物を扱う荷主は特定事業者に該当するため、判断基準を明確にする必要があります。
ただし実際は、正確な重量を把握するのが困難なため、以下の簡易的な算出方法を使用しておおまかに求めます。
・商品マスタデータの活用
・容積から重量換算(1㎥=280kg)
・トラック最大積載量での換算
・売上金額から重量換算
したがって、自社の物流量をデータ化して一元管理すると、迅速かつ正確な報告が可能になります。
物流統括管理者(CLO)の選任
特定事業者のうち荷主企業や連鎖化事業者は、物流改善の専任責任者である「物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)」を選任する必要があります。
というのも、物流の改善には運送や倉庫など複数の部門をまたぐため、全体的な視点で改善を推進する専門的な責任者が求められているのです。
具体的にCLOは、単なる物流の責任者ではなく、事業運営で欠かせない中長期計画の策定・実行をしたり、社内や外注先との連携強化を図ったりします。
このように、社内外の体制をより強固に構築するためにも、CLOが主導となって流通全体の効率化や社外との水平・垂直連携の強化を推進します。
中長期計画の作成・提出
特定事業者は、ドライバーの負荷を軽減するために、具体的な目標や実施事項などを記載した「中長期計画」を作成・提出しないといけません。
毎年度提出するのが原則ですが、計画に変更がない場合は5年に1度の提出となります。
具体的には、荷待ち時間の短縮や積載率の向上、荷役作業の効率化といった項目ごとに、具体的な実施時期や数値目標などを盛り込みます。
さらに、DX(デジタル変革)ツールの導入や倉庫の統合など、目標達成に必要な実施事項を記載する必要があるのです。
物流効率化の取り組み状況を定期報告
特定事業者に指定されると、翌年度より努力義務の実施状況に関する以下の報告をしないといけません。
| 報告項目 | 報告方法 |
| 事業者の判断基準における遵守状況 | チェックリスト形式で回答 |
| 事業者間の連携状況 | 判断基準と関連した取組に関する状況を自由記述で報告 |
| 荷待ち時間等の実態(荷主・連鎖化事業者・倉庫業者) | 荷待ち時間や荷役時間などの平均時間を、施設ごとに報告 |
また、取り組みを確実に実行するため、国は以下の取り組み結果について、中長期計画として文書化する必要があります。
| 区分 | 具体的な取組内容 |
| 積載効率の向上 | ・余裕を持った配送計画でリードタイムを確保する ・繁閑差を平準化し、配送を集約する ・物流・販売・調達部門が連携して発送量を調整する |
| 荷待ち時間の短縮 | ・トラック予約受付システムを導入し、到着時間を管理する ・混雑時間を避けて日時指定をする |
| 荷役時間の短縮 | ・規格統一したパレットを導入して、作業の効率化を図る ・運びやすい商品形状へと改善する ・フォークリフトや人員を適切に配置する ・事前出荷情報(ASN)やタグ活用で検品のスピードアップを図る |
| 実効性の確保 | ・責任者(CLO等)の選任と社内教育を徹底する ・ドライバーの労働環境に配慮する ・デジタル技術(AI・IoT)を活用する ・物流コストを見える化し価格体系を見直す ・事業者間での連携を推進する |
このように、物流改善に向けたプロセスの透明化を図るためにも、PDCAサイクルを回している状況を客観的に示すために必要があるのです。
取り組み不足の場合は罰則・行政指導への対応
特定事業者として各種義務を怠ると、行政処分や罰則が科されることがあります。
実際、物流効率化法では罰則として、以下のことが挙げられます。
| 罰則内容 | 該当事項 |
| 最大100万円以下の罰金 | ・取り組みの未実施で勧告・命令に従わない ・CLOの選任を怠る |
| 50万円以下の罰金 | ・計画書の提出をしない ・前年度実績が特定事業者の該当基準以上にもかかわらず、届出をしない・虚偽の報告をする |
| 20万円以下の過料 | ・CLOの選任・解任の届出を怠る |
さらに、努力義務の取り組み状況が著しく悪いと、報告徴収や立入検査はもちろん、企業名が公表されることがあります。
これによって、自社の社会的信用やブランド力の低迷につながるため、義務への対応は不可欠です。

物流の2026年問題が業界全体に与える影響

物流の2026年問題は、物流効率化法の改正によって、特定事業者だけでなく物流に携わる業界全体に大きな影響を与えます。
主な影響として、以下のことが挙げられます。
・物流コストの上昇と料金体系の見直し
・業務プロセスの変化と再構築
・ドライバー不足の深刻化と物流ネットワークの再編
それぞれ順を追って解説します。
物流コストの上昇と料金体系の見直し
2026年問題による義務化は、対応するにあたって高額なコストがかかります。
というのも運送業者は、労働時間の規制や人件費・設備投資の増加に対応しないといけないためです。
たとえば、ドライバーの給与水準を上げて人手不足に対応したり、荷主への値上げ交渉を実施したりする必要が生じます。
一方で荷主企業も、DX(デジタル変革)ツールの導入や荷役作業の改善をしなければなりません。
このように物流業界では、「安く運ぶ」という従来の価格競争から、「持続可能なサービス提供」に見合った適正な料金体系が求められています。
業務プロセスの変化と再構築
2026年問題は、物流業界全体を通して、業務プロセスの変化に対応した体制の再構築が欠かせません。
実際、特定事業者は中長期計画の作成・提出や、取り組み状況の定期報告などに向けた体制を整える必要があります。
こうした義務化に対応するにも、事前の車両入場予約システムを導入したり配送ルートを最適化したりするのが効果的です。
こうしてデータやシステムを活用したDXを推進すると、積み込み・荷役・輸送の一連の作業プロセスを可視化でき、業務効率化に向けて体制を抜本的に見直せます。
ドライバー不足の深刻化と物流ネットワークの再編
2026年問題は、2024年問題に引き続いてトラックドライバーの労働時間制限が課題となるため、ドライバー不足の深刻化を招きます。
というのも、運送効率の低下によって、一人のドライバーが長距離輸送をするのが時間的に困難になるためです。
これにより、特に地方の配送拠点での人手不足がより深刻化し、従来の物流体制の維持が難しくなります。
ドライバー不足の対策として、複数人のドライバーで分担する「中継輸送」を採用し、新たにドライバーの乗り継ぎをする拠点を設けましょう。
また、トラックに代わり鉄道や船を活用する「モーダルシフト」を積極的に推進するのも効果的です。
したがって、企業は複数の輸送手段や共同配送サービスなどを利用し、物流ネットワークの見直しが求められています。

物流の2026年問題に効果的な7つの対策

物流の2026年問題を乗り切るためには、単に法律上の義務を満たすだけでなく、以下の対策もあわせて実行するのが有効です。
・3PL依存から脱却し自社内にノウハウを蓄積
・荷待ち・荷役時間の削減に向けたデータ把握と分析
・AI・IoTを活用した物流の効率化・最適化
・共同配送・モーダルシフトの推進による輸送の効率化
・荷主と物流事業者の連携体制を構築
・国が提供する資料を積極的に活用
・職場環境の改善による人材の確保と定着
持続可能な物流体制を実現するためにも、これらの対策を総合的に実施しましょう。
3PL依存から脱却し自社内にノウハウを蓄積
物流の効率化を進めるためには、サードパーティロジスティクス(3PL)への依存から脱却するのが大事です。
そもそも3PLとは、荷主企業に代わって物流業務を包括的に請け負う外部の専門業者のことです。
3PLを活用すると荷主はコア事業に集中できるため、業務効率化や競争力強化につながります。
ただし、2026年4月の法改正から荷主自らが物流の状況を把握して、改善計画を立てる義務が課されます。
よって、すべての業務を外部に委託している状態では、的確な報告や対応が困難です。
具体的な対策として、運送業者から提供される情報だけでなく、自社の出荷・倉庫作業に関する詳細なデータも収集・分析しましょう。
そのためにも、物流担当者の知識や経験を高める教育を定期的に実施するのが効果的です。
このように、物流に関するノウハウやデータを自社内に蓄積すると、自律して改善に向けた施策を打ち出せます。
荷待ち・荷役時間の削減に向けたデータ把握と分析
物流の効率化を図るためにも、ドライバーの荷待ち・荷役時間に関するデータの把握と分析を徹底しましょう。
実際に荷待ち・荷役時間の短縮は、令和10年度(2028年度)までの最終目標の一つとして掲げられています。
たとえば、入場から受付、荷役作業の完了までの各時間を正確に計測したり、倉庫への車両入場にて予約システムを導入し、時間の平準化を図ったりするのが有効です。
したがって、物流の効率化を実現するためにも、DX(デジタル変革)ツールを活用し、どの作業にどれだけの無駄な時間が発生しているかを把握するのが大事です。
AI・IoTを活用した物流の効率化・最適化
物流効率化を抜本的に進めるためにも、AIやIoT(インターネットにつながる機器)などの最新技術を活用しましょう。
というのも、人手不足が慢性化している中で、人間の力だけで課題解決をするのは困難です。
具体的には、AIを活用して最適な配送ルートを自動で算出したり、IoT機器を導入して倉庫内の作業やトラックの積載状況をリアルタイムで把握したりします。
実際にイオンでは、AIを用いて配送ルートを最適化し、配送体制の効率化を図っています。
参照元:イオン「イオンの物流「2024年問題」対応について」
よって、物流効率化の基盤を整える際は、AIやIoTの技術を積極的に導入して、物流の効率化・最適化を進めましょう。
共同配送・モーダルシフトの推進による輸送の効率化
2026年問題に伴う輸送能力の不足に対応するには、配送荷物をまとめたり他の輸送方法を活用したりするのが大事です。
これにより、輸送の効率化が図れるとともに、ドライバーの負担軽減にもつながります。
たとえば、同じ地域への配送荷物を一つのトラックに積み込む「共同配送」を実施したり、長距離の輸送ではトラックに代わり鉄道や船を利用する「モーダルシフト」を推進したりします。
このように、物流全体のネットワークを最適化するためにも、業界や競合企業との連携を積極的に取りましょう。
荷主と物流事業者の連携体制を構築
2026年問題の解決には、荷主と物流事業者が協力体制を構築して連携を強化しましょう。
というのも、荷主と物流事業者の協力なしでは、荷待ち時間の削減や適正な料金設定が難しいからです。
具体的には、荷主は物流作業の標準化やDXに関する施策を進めましょう。
実際に、標準仕様パレットやトラック予約受付システムを導入したことで、作業が効率化してドライバーの拘束時間短縮につながりました。
一方で物流事業者は、荷待ち時間のデータを荷主に定期的に報告して改善を促しましょう。
こうして、課題やトラブルを一緒に解決する体制を構築するためにも、物流に関する情報を隠さず相互に共有するのが大事です。
国が提供する資料を積極的に活用
効果的に対策を実施するためにも、国が提供する資料を積極的に活用しましょう。
これにより、物流の2026年問題への対応に伴う負担を軽減でき、効率的に施策を推進できます。
具体的な情報として、以下のサイトを参考にすると、理解の助けとなります。
こうした情報を確認すると、物流効率化の取り組みを効果的かつ経済的に進められます。
職場環境の改善による人材の確保と定着
2026年問題の背景にあるドライバー不足という課題を解決するためには、物流に携わる人材の確保と定着に努める必要があります。
物流業界では、勤務時間が長くなったり不規則になったりと、体力的な負担が大きく健康リスクが高いです。
そのためにも、長期的な視点での職場環境の改善が欠かせません。
具体的には、ドライバーの休憩環境や待機場所を整備したり、給与や評価制度を改善したりしましょう。
あわせて、以下のような心身の健康を促進するサービスを、福利厚生の一環として導入するのもおすすめです。
・食事診断
・生活習慣改善セミナー
・スポーツジムや運動動画
特に、いつでも・どこでも利用できるスタイルを取り入れると、さらに従業員の満足度向上につながります。
このように、物流効率化の取り組みと並行して職場の魅力を高めることで、若い世代や女性などの新たな人材を積極的に確保できます。

まとめ:物流の2026年問題の対策で職場環境を改善したいなら、「心幸の福利厚生サービス」を活用しよう!

物流の2026年問題を解決するには、AIによる効率化や荷主との連携強化など、多角的な対策が求められます。
それらの中で根幹となる対策として、人材の確保と定着が挙げられます。
そのためにも、職場環境を改善して、従業員が働きやすい環境づくりを実施するのが有効です。
心幸の福利厚生サービスでは、食事や運動などの健康に関するサポートを幅広く提供しています。
2026年問題に対して効果的に対応したい、持続可能な物流体制を構築したい場合は、ぜひこの機会に「心幸の福利厚生サービス」の活用をご検討ください。
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