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フレックスタイム制はなぜ普及しない?ずるい?デメリットは?を全て解説

フレックスタイム制はなぜ普及しない?ずるい?デメリットは?を全て解説

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更新日|2023年9月27日
所長|いくた
この記事の概要

ワークライフバランスを実現し、労働者の満足度とモチベーションを向上させるために、「フレックスタイム制」の導入を検討している会社は多いのではないでしょうか。しかしフレックスタイム制は「ずるい」とも言われており、日本ではあまり普及していません。今回はフレックスタイム制について、さまざまな方向から解説します。普及しない理由や、ずるいという声の要因、制度のメリットデメリットなどを、以下でみていきましょう。

目次

フレックスタイム制とは?

時計を持つ女性

フレックスタイム制(Flexible Time System)とは、1日の労働時間の配置(始業時間や終業時間の決定)を自分の裁量によって決定できる、労働時間制度の一種です。労働者のワークライフバランスの向上や通勤の混雑緩和などを目的として、導入されることが多いです。フレックスタイム制は、主に「コアタイム」「フレキシブルタイム」と呼ばれる2つの時間帯の区分から構成されています。

コアタイムとは、労働者が必ず出勤しておかなければならない時間帯のことを指します。例えば、コアタイムが10:00から15:00と設定されている場合、労働者はこの時間には出勤あるいは仕事を開始していなければなりません。

フレキシブルタイムは、コアタイムの前後の時間帯です。自分の都合や作業の効率などに応じて、労働者が自らの裁量で、労働時間の配置を柔軟に決定できます。コアタイムが10:00から15:00なら、その前後にあたる8:00から10:00や15:00から18:00といった時間帯がフレキシブルタイムとなります。

フレックスタイム制の全体の労働時間(総労働時間)は、労使協定によって定められなければなりません。自分の裁量で労働時間の配置が決定できるとはいえ、それはあくまでも全体の労働時間の範囲内での調整となります。

通常の労働時間制とフレックスタイム制の違い

電球ひらめき

従来の日本の企業において用いられてきた、通常の労働時間の制度と、フレックスタイム制には、具体的にどのような違いが存在するのでしょうか。以下において3種類の労働時間制度について解説します。それぞれの制度がどのようなものかを知ることで、通常の労働時間制度とフレックスタイム制の違いが見えてくるでしょう。

通常の労働時間制度

日本において広く用いられてきた通常の労働時間制度は「固定労働時間制」と呼ばれています。固定労働時間制の下では始業時間や終業時間といった労働時間配分が固定されているのが通常です。労働者はあらかじめ決められた労働時間配分に従って勤務します。

例えば、始業時間が9:00で終業時間が18:00と定められているなら、9:00から18:00の間が勤務時間となります。また、固定労働時間制では、昼休みやその他の休憩時間についても、あらかじめ特定の時間帯に決定されているのが一般的です。

労働時間配分が決まっている固定労働時間制は、労働者のスケジュール管理がしやすく、給与計算などがわかりやすいというメリットがあります。労働者にとっても予定が立てやすい制度といえるでしょう。

ただし、固定労働時間制の下では、労働者が自らの裁量で勤務時間を変更することは通常できません。固定労働時間制は柔軟性に欠ける制度といえます。

フレックスタイム制

フレックスタイム制は固定労働時間制とは異なり、労働時間を柔軟に選べるという特徴があります。ただし、会社で働く者すべてが出勤しなければならない固定された時間帯(コアタイム)があることには注意が必要です。

そのほかの時間帯(フレキシブルタイム)に関しては、労働者が自分の都合や労働の効率に合わせて出退勤を選ぶことが可能です。また、フレックスタイム制では、1日における労働時間を固定化せず、一定の期間で総労働時間を定めます。労働者はその総労働時間内の範囲において、生活と業務のバランスに配慮しながら、各労働日の労働時間・出退勤の時間・休憩時間などを自分で決定します。

つまりは、労働時間を自主管理できる点が、固定労働時間制とフレックスタイム制の大きな違いであるといえるでしょう。なお、フレックスタイム制は、労働者のワークライフバランスの実現や生産性の向上に効果があるとされています。

スーパーフレックスタイム制

スーパーフレックスタイム制は、フレックスタイム制を一歩進めた形態といえる労働時間制度です。1日における労働時間は固定されず、一定期間における総労働時間が定められている点は、フレックスタイム制と同じです。しかし、スーパーフレックスタイム制には「コアタイムが廃止」されているという特徴があります。

労働者はコアタイムに縛られることなく、自分の裁量によって完全に自由に、勤務時間・始業時間・終了時間を選ぶことが可能です。また、スーパーフレックスタイム制においても総労働時間は定められています。あくまでも、その範囲内において調整ができるにすぎません。

スーパーフレックスタイム制は、固定労働時間制に比べ、個人の状況に合わせて勤務時間を調整しやすい制度です。生活・家庭・体調、あるいは仕事の進行状況に合わせて、自分の裁量で労働時間配置ができます。コアタイムが存在しないため、フレックスタイム制と比較しても、さらに自由度が高い制度です。

それゆえに、導入によって高いレベルでのワークライフバランスの実現が期待できます。しかし、労働配分を労働者の自主性に依拠するので、どのような会社でも導入できる労働時間制度とはいえません。労働者の自律性や自己管理能力を高く評価する企業、働く場所や時間に制約が少ない業種あるいは職種において、導入されるケースが多いです。

スーパーフレックスタイム制を導入する企業は、勤務時間よりも成果や業績を重視する傾向があります。スーパーフレックスタイム制は自己裁量で労働時間を配置するため、労働者の実績や成果の判断に、労働時間や勤務状況などの反映が難しくなるからです。

なかには完全な成果主義に基づく評価が行われる会社もあります。そのため、固定労働時間制よりも、自己管理能力や具体的な成果を求められる場合が多いので注意が必要です。なお、成果主義は労働者の負担やストレスを増加させる原因ともなります。

スーパーフレックスタイム制を導入する際には、メリットに目を向けるだけでなく、デメリットによって労働環境が悪化する可能性も考慮しなければなりません。

フレックスタイム制はなぜ普及しない?

オフィスビル

2013年の調査によれば、欧州の企業の約半数が、8割以上の従業員の労働時間制度についてフレックスタイム制を採用しています。しかし、日本ではヨーロッパほどフレックスタイム制は普及していません。なぜ日本ではフレックスタイム制が普及しないのでしょうか。

その理由には複数の要因が関わっています。まず、日本の多くの会社は「変革に対して消極的」である点です。労働者が同じ時間帯に働くことを重要視し、既存の労働スタイルを変化させることを好みませんでした。その結果、日本では固定労働時間制が根強く残り、フレックスタイム制に対して消極的な態度がとられるようになりました。

「生産性低下の懸念」も要因の1つです。フレックスタイム制の労働時間管理は、労働者の自己管理に任せられます。自己管理が下手な労働者の場合は、フレックスタイム制の導入によって、労働生産性が低下する可能性があります。

労働者の勤務時間が異なることによって「企業内でのコミュニケーション不足を招く」ことも要因として挙げるべきでしょう。会社内だけでなく、外部企業との連絡調整も、フレックスタイム制では難しくなります。

さらに、フレックスタイム制を導入すると「勤怠管理や成果評価の複雑化」は避けられません。勤怠管理方法や成果の評価方法の変更が必要となるでしょう。

また、以上のような要因をすべてカバーできたとしても、問題は残ります。フレックスタイム制が全ての労働者にとって最適な働き方ではないからです。勤怠管理が苦手な労働者は、フレックスタイムの導入によって、仕事に不安を覚えるようになるでしょう。

労働基準法や労働組合の規制によって、働き方がある程度制約されていることも、フレックスタイム制が普及しなかった一因といえるでしょう。法や規則の要件を満たす準備に手間がかかるからです。なお、日本だけでなく、韓国や中国などでも、フレックスタイム制に対して一定の規制が設けられています。以上のような要因が絡み合い、日本ではフレックスタイム制があまり普及しませんでした。

フレックスタイム制はずるい?

考え込む女性

フレックスタイム制についての意見を求めると「フレックスタイム制はずるい」との回答が得られることがよくあります。なぜ「フレックスタイム制はずるい」と感じるのでしょうか。

まず、フレックスタイム制はすべての職種に最適な労働時間制度ではありません。適していない業務が存在するため、会社で働く人全員にフレックスタイム制を当てはめることは難しいでしょう。それゆえに、フレックスタイム制を導入する場合には、一部の労働者についてのみ用いられるのが一般的です。しかし、自己裁量の範囲が増えるフレックスタイム制は、労働者にとって大変魅力的な制度です。そのため、一部の労働者にだけこの制度が用いられると、ほかの労働者から不満が出やすくなります。

特に、多くの労働者が業務のピーク時に集中的に働き、フレックスタイム制を利用する労働者がピーク以外の時間帯に働いた場合、労働量や労働の内容に不平等感が生じやすくなります。当然のことながらピーク時に働く労働者には不満が生じるでしょう。さらに、フレックスタイム制と従来の労働時間制度では、成果の評価方法も変わります。評価基準が異なると、労働者の立場からは公平な判断がされていると捉えにくくなり、「フレックス制はずるい」と感じる原因となります。

フレックスタイム制とそのほかの制度で働く者が、互いの状況を知り、評価が不当でないことが理解できるようになれば、不平等感は解消するでしょう。しかし、フレックスタイム制は労働者の勤務時間が異なるため、労働者同士がコミュニケーション不足に陥りやすくなります。コミュニケーション不足は、情報の非対称性を生じさせます。それゆえに「フレックスタイムはずるい」という感情が一度生まれると、なかなか解消できません。場合によっては、会社としての一体感を失ってしまう可能性もあります。

加えて、同じだけの労働時間を消化していても、早い時間に退社することが「ずるい」と感じる社会的圧力が日本には存在しています。以上のような要因が合わさり「フレックスタイム制はずるい」という感情が生まれているようです。

また、日本にはフレックスタイム制をうまく利用できない状況が生まれやすいことも問題といえます。例えば、早い時間に退社する労働者が、残って働く人に対して「申し訳ない」という感情を持つのが当然だという同調圧力が多くの会社に存在しているからです。このような同調圧力は、制度の利用がまるで「ずるいこと」のような感情を与えます。

これからフレックスタイム制を導入するのであれば、労働者間に不平等を生まない配慮と、気軽に制度が利用できる土壌を築くことが大切です。

フレックスタイム制の目的・メリット

メリット

フレックスタイム制を導入することで、どのような目的が達成でき、どんなメリットが得られるのでしょうか。以下で見ていきましょう。

ワークライフバランスの実現

多様性が広く認められるようになった今日の社会では、労働者1人1人の個性や生活環境に対応した労働環境が求められるようになっています。フレックスタイム制は、それぞれの労働者のニーズやライフスタイルに合わせられる、多様性を受け入れやすい労働時間制度といえるでしょう。

導入することによって、家庭の状況・健康状態・趣味の時間・学習の時間といったプライベートと、仕事の時間をバランスよく調和させ「ワークライフバランスの実現」が可能です。

通勤の混雑緩和

通勤ラッシュは労働者のストレスの原因となりやすいので、なるべくなら避けたいものです。フレックスタイム制度は労働者の「通勤の混雑緩和」を目的に用いられることがあります。誰もが同じ時間に出退勤をすると、公共交通機関は混雑してしまいます。

フレックスタイム制を導入すれば、出退勤の時間をずらすだけで、簡単に通勤ラッシュを避けることが可能です。これによって、ストレスフリーな通勤が期待できます。また、車通勤の方は、主要幹線道路の混雑が避けられるので、通勤時間の節約にもつながるでしょう。

生産性の向上

フレックスタイム制は労働生産性の向上が期待できる制度です。人の1日のバイオリズムは、一定ではありません。特定の時間帯になれば眠くなってしまったり、集中力を欠いてしまうことがあります。逆に、特定の時間では集中力が高まることもあります。

フレックスタイム制なら、この集中力が高まる時間帯に仕事を集中させることが可能です。これによって、労働の質や効率、ひいては労働生産性の向上が期待できます。

従業員の満足度とモチベーションの向上

従業員の働き方に自由度や柔軟性が増すと、仕事に対する満足感やモチベーションが高まることが示唆されています。

フレックスタイム制は、従業員が自らの生活や価値観に合わせて働くことを可能にするため、職場の満足度やモチベーションの向上に寄与すると考えられます。

欠勤率の低下

突発的な私的な予定や健康上の問題など、予期せぬ事情での欠勤は従業員にとっても企業にとっても不利益です。

フレックスタイム制の導入により、従業員は自分の状況や必要に応じて勤務時間を調整できるため、急な欠勤や遅刻が減少する可能性があります。

人材確保と採用力の強化

フレキシブルな働き方は、特に若い世代や多様なバックグラウンドを持つ人々にとって魅力的です。

フレックスタイム制を取り入れる企業は、より多くの人材を引き付けることができ、また従業員が長くその企業で働くことを選ぶ可能性が高まります。

フレックスタイム制のデメリット

デメリット

多数のメリットがあるフレックスタイム制ですが、やはりデメリットも存在します。ここではフレックスタイム制の代表的なデメリットについて見ていきましょう。

従業員同士のコミュニケーション不足

労働者が異なる時間に出勤して退勤するフレックスタイム制の下では、固定労働時間制の場合に比べて、同じ時間帯にオフィスにいる人数が限られてしまいます。そのため、直接にコミュニケーションをとる機会が失われやすくなり、情報の共有や連絡が取りにくくなってしまう傾向がフレックスタイム制にはあります。

緊急の判断や迅速な意思決定が必要な場合に、コミュニケーション不足は大きな足かせとなるため、注意が必要です。

管理の複雑化

労働者の勤怠管理が複雑になるのも、フレックスタイム制のデメリットといえます。労働者個人の裁量によって出退勤の時間が決められるため、従来の勤怠管理方法では、勤務時間や労働状況の把握が困難になるためです。

そのため、フレックスタイム制の導入は、人事や管理職の負担を増やし、管理業務の手間を大きくすることがあります。また、制度の利用方法を十分に周知できていない場合には、フレキシブルタイムやコアタイムの取扱いなどで、混乱を招くかもしれません。

職場の連帯感や結束力の低下

フレックスタイム制の導入で労働者同士の交流が減少すると、職場における一体感や連帯感が低下することがあります。

その結果、会社の結束力を失わせてしまうかもしれません。結束力が失われてしまうと、企業文化やチームワークに悪影響を及ぼし、会社のブランド力や労働生産性を低下させる可能性があります。

業務の進行に影響

複数のメンバーで1つの仕事に取り組む場合、フレックスタイム制が業務の進行に影響を与える可能性があります。なぜなら、フレックスタイム制の下では、業務に必要となるメンバーを特定の時間帯に集めることが難しくなるからです。

メンバーによる業務進行の同時性が確保できないと、業務の遅延や非効率性が生じてしまう場合があります。

顧客やビジネスパートナーとの調整が複雑化

フレックスタイム制を導入すると、労働者が会社内にいる時間がわかりにくくなります。顧客やビジネスパートナーなど、外部とのやりとりが必要な業務において、調整が難しくなるでしょう。

定常的な業務時間を持つパートナー企業・顧客との電話会議・商談のスケジューリングなどで、予定や面談の調整が複雑化する可能性が高くなります。調整が複雑になるほど人的なミスが増えるので注意しなければなりません。

また、緊急時にクライアントから連絡があった場合や、事前に設定されていない会議が発生したときなど、対応が遅れてしまうかもしれません。

残業時間や清算期間、残業代について

オフィス風景

時間外労働(残業)には「法外残業」と「法内残業」の2種類があります。

「法外残業」は法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えた場合を指し、超過労働時間分の賃金に法定の割増賃金を加えて支払わなければなりません。

「法内残業」は会社規則の労働時間を超えた場合を指し、超過労働時間分の賃金を支払う必要があります。超過労働時間を加えた総労働時間が法定労働時間内であれば、割増賃金を支払う必要はありません。

当然のことながらフレックスタイム制であっても時間外労働は発生します。ただし、フレックスタイム制の残業時間の計算では「清算期間」と「総労働時間」に注意しなければなりません。「清算期間」とは、フレックスタイム制の下で定められた総労働時間を消化する期間を指し、最長3カ月まで設定できます。「総労働時間」は、清算期間内における所定労働時間のことです。

清算期間が3カ月・総労働時間が400時間と設定されている場合には、3カ月の間に400時間の労働をしなければなりません。フレックスタイム制では、総労働時間を超えた場合の超過労働時間を残業時間として捉えます。つまりは、清算期間が3カ月・総労働時間が400時間の場合、420時間働いたなら、超過した20時間は残業扱いです。当然ながら、法定労働時間を超えて残業した場合には、使用者は労働者に割増賃金を支払わなければなりません。

フレックスタイム制における法定労働時間の計算方法は「40時間(1週間の法定労働時間)×清算期間の総日数÷7日」です。1カ月が31日なら、1週間あたり177.1時間が法定労働時間となり、これを超した労働は法外残業となります。

また、清算期間が3カ月の場合には「清算期間全体の労働時間が週平均40時間を超す」あるいは「1カ月あたりで労働時間が週平均50時間を超える」ときも法外残業扱いとなります。

フレックスタイム制に適している職種

デザイナー

一般的に、個人の能力に左右されやすい業務で、ある程度個人で取り組むことが可能な仕事は、フレックスタイム制に向いているとされています。

例えば、デザイナー・エンジニア・研究職といった職種は、実際にフレックスタイム制がよく導入されています。外部の影響が少なく仕事の区切りがつけやすい、事務職や企画職にもフレックスタイム制はおすすめです。また、業務が時間や場所に束縛されないプログラマーのような職種も、フレックスタイム制に向いているでしょう。

フレックスタイム制に適していない職種

接客業

労働時間配分の自由度が高いことが、悪影響を及ぼしやすい職種も存在します。そのような職種はあまりフレックスタイム制が適していません。

例えば、社内外との連絡を頻繁に取る必要がある営業職や営業アシスタントは、フレックスタイム制が向いていない職種といえるでしょう。持ち場を離れられない接客サービス業、工場など決まった場所で作業する必要がある工場作業員なども、フレックスタイム制の導入が難しい仕事といえます

フレックスタイム制の導入要件

ポイント

フレックスタイム制の導入には「就業規則の規定」「労使協定の締結」という2つの要件を満たす必要があります。これらの要件を満たさないフレックスタイム制は違法とされるので注意しましょう。以下でそれぞれの要件について解説します。

就業規則を規定する必要がある

フレックスタイム制を採用する場合、就業規則に「始業及び終業時刻を労働者の決定に委ねる旨」を記載しなければなりません。コアタイム・フレキシブルタイムを設定したい場合には、それぞれの時間帯について、就業規則に記載します。

就業規則を作成あるいは変更した場合は、行政官庁に届け出なければなりません。なお、就業規則の作成や届出をしなかった場合、30万円以下の罰金が処されます。

労使協定を締結する必要がある

フレックスタイム制を導入する場合、「フレックスタイム制の対象となる労働者の範囲」「清算期間およびその起算日」「清算期間内における総労働時間」「標準となる1日の労働時間」について取り決め、労働組合(組合がない場合は労働者の代表)と会社の間で書面による協定を結ばなければなりません。

清算期間が1カ月を超える場合には、管轄の労働基準監督署に労使協定書を提出する必要があります。コアタイムおよびフレキシブルタイムを設定する場合は、その時間帯について協定書に記載しておかなければなりません。

なお、就業規則を規定し労使協定を締結したとしても、18歳未満の労働者にはフレックスタイム制を用いることはできません。注意しましょう。

裁量労働制・変形労働時間制との違い

フレックスタイム制と混同されがちな労働時間制度に「裁量労働制」や「変形労働制」というものがあります。それぞれどのような違いがあるのでしょうか。

裁量労働制とは、会社との労使協定あるいは労使委員会の決議によって、あらかじめ定めた一定時間を労働時間とみなす制度のことです。この制度では、労働者が自分の裁量で働く時間を決められます。みなし時間が8時間と規定されたなら、10時間働いても逆に1時間しか働かなくとも、8時間働いたものとみなします。裁量労働制は、生産性を高めることを目的とした制度です。しかし、すべての業務や職種に裁量労働制を適用できるわけではありません。

裁量労働制が適用できるのは、厚生労働省が定めた業務に限定されています。例えば、システムエンジニア・プログラマー・研究開発者・編集者・建築士といった専門性の高い業務を行う労働者(専門業務型)、企画・立案・調査および分析を行う労働者(企画業務型)に限られています。

変形労働制は、柔軟な労働時間の運用を目的にした労働時間制度です。総労働時間を週単位・月単位・年単位で調整することによって、業務量に応じた労働時間配分ができます。閑散期に労働時間を減らし、繁忙期に労働時間を集中させるといった労働時間配分が可能です。労働力を効率的に集中できるため、残業時間の削減が期待できます。変形労働制は業種を問わずにすべての労働者に適用できる制度です。ただし、1週間単位で総労働時間を設定できるのは、労働者数が30人未満である小売業・旅館・料理店・飲食店に限られます。

フレックスタイム制は変形労働制の一種です。フレックスタイム制が労働者の都合に合わせて労働時間を配分する制度であるのに対し、変形労働制は会社の都合による労働時間配分を可能にする、という違いがあります。また、変形労働制における労働時間・始業時間・終業時間などは会社側が決定します。

フレックスタイム制の勤怠管理の注意点

注意点

フレックスタイム制における勤怠管理で、問題となりやすいポイントについて以下で解説します。

遅刻・早退

フレックスタイム制における遅刻や早退の扱いは、コアタイムの有無によって変わります。次の項でみていきましょう。

コアタイムがある場合

コアタイムは、必ず出勤していなければならない時間です。そのため、コアタイムに遅れた場合は遅刻として扱います。同じように、コアタイム中に退勤した場合は、早退として扱います。

しかしながら、フレックスタイム制の性質上、清算期間の総労働時間を満たしてさえいれば、コアタイム中に遅刻や早退があったとしても、賃金カットすることはできません。遅刻や早退について何らかの罰則を設定したい場合には、就業規則にペナルティを規定したり、人事査定によって対処するとよいでしょう。

コアタイムがない場合

コアタイムが設定されていない場合、すべての労働時間がフレキシブルタイムとして取り扱われます。

つまりは、すべての労働時間において労働者が自分で労働時間配分を決定できるため、遅刻や早退といった概念が存在せず、遅刻や早退は発生しません。

欠勤

就業規則において労働日と休日が規定されている場合、フレックスタイム制であっても、労働者は労働日について出勤する義務があります。そのため、労働日に出勤しない場合は欠勤扱いにできます。

ただし、欠勤があっても清算期間の総労働時間よりも実労働時間の方が長い場合には欠勤控除ができません。欠勤控除ができるのは、清算期間中の総労働時間に、実労働時間が足りなかったときに限られます。なお、実労働時間が足りなかった場合は「不足した時間分だけ賃金を減らす」あるいは「次の清算期間に不足時間分を上積み」するといった措置が取られるのが一般的です。

休憩時間

労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える労働の場合は1時間以上、使用者は労働者に休憩時間を与えなくてはなりません。休憩時間は「労働時間の途中に」、全労働者へ「一斉に」与える必要があります。また、休憩時間は労働者に「自由に」利用させなければなりません。休憩時間の扱いは、原則的にフレックスタイム制でも同じです。

通常、コアタイムの間に休憩時間が設定されます。ただし、労使協定を締結すれば「一斉に」という条件を外すことが可能です。なお、一斉休憩の適用除外業種(運輸交通業、商業、金融広告業、映画・演劇業、通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署)で働くものについては、一斉に休憩時間を与えなくともかまいません。

休日出勤

労働基準法35条1項の定めにより、使用者は労働者に1週間に1日以上、もしくは4週を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。この休みは「法定休日」と呼ばれています。フレックスタイム制においても、使用者は労働者に法定休日を与えなければなりません。

フレックスタイム制で働く者が法定休日に出勤した場合、清算期間における総労働時間の枠内であったとしても休日出勤扱いとなります。使用者は、法定休日の労働時間分について、通常の賃金に加え割増賃金(3割5分)を支払わなければなりません。

労働基準法の定めにある法定休日以外に会社が設定した休みは「法定外休日」と呼ばれています。フレックスタイム制で働く者が法定外休日に出勤した場合には、法的には休日出勤扱いになりません。清算期間における総労働時間の枠内に含めて計算する必要があります。なお、法定労働時間を超えた時間分については、通常の賃金に加えて2割5分の割増賃金を支払わなければなりません。

自分の裁量で働き方を決められるフレックスタイム制!導入には正しい理解を得ることが大切

フレックスタイム制は、労働者が自分の裁量で柔軟な働き方が実現できる、労働時間制度です。制度の導入によって、ワークライフバランスが実現しやすくなるだけでなく、労働者のストレス軽減や生産性向上も期待できるでしょう。

ただし、この制度を「ずるい」と感じ、不平等に思う人がいることも事実です。導入する場合は、制度に対する正しい理解が得られるように、事前に十分な情報の周知をはかることが大切です。

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