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わかりやすく!働き方改革を解説|基礎知識から取り組み方、事例まで

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更新日|2023年11月29日
所長|いくた
この記事の概要

世の中に浸透し多くの方が知る言葉となった「働き方改革」。とはいえ、「働き方改革ってなに?」「働き方改革を進める理由は?」「具体的に何をすればよいの?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、働き方改革について分かりやすく解説します。基礎知識や効果的な取り組みや企業の成功事例についても紹介します。

目次

働き方改革とは

社員たち

厚生労働省が2019年に発表した定義によると、働き方改革とは、働く人々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革、とされています。

働き方改革の大きな目的をわかりやすく言うと、2015年に掲げられた「一億総活躍社会の実現」を成し遂げることです。厚生労働省では一億総活躍社会を「50年後も人口1億人を維持し、日本人の誰もが家庭・職場・地域で生きがいを持って充実した生活を送れる社会」と定義しています。

労働環境の抜本的な見直しを行い、老若男女を問わずすべての人が自分に合ったワークスタイルを選べるようにするために取り組みが開始されました。労働環境を取り巻く社会問題の解決のために、官民が協力し合って施策を進めています。

参考/厚生労働省「働き方改革」の実現に向けて

働き方改革の基礎知識

日本では少子高齢化の影響から生産年齢人口の減少が進み、限られた人的リソースで効率的に業務を遂行することが求められています。内閣府の「令和4年版高齢社会白書」によると、日本の生産年齢人口(15~64歳)は1995年の8716万人がピークで2021年には7450万人まで減少しました。

ライフスイタイルや価値観は多様化が進んでおり、仕事で重要視する要素も様々になりました。育児・介護と仕事の両立や女性の社会進出など、雇い主である企業が世間的なニーズに対して柔軟な対応を求められるようになったのです。

こうした背景から日本政府は現状改善のために法整備を進め、労働基準法をはじめとする8つの法律を改正した「働き方改革関連法案」を2018年に成立させています。翌2019年4月からは大企業を中心に順次施行が開始され、中小企業も追随する形で取り組みが求められるようになりました。

参考/内閣府「令和4年版高齢社会白書(全体版)」

働き方改革実現のための3つの柱

働き方改革では「長時間労働の是正」「正規・非正規間の格差解消」「多様な働き方の実現」という3つの柱を掲げ、あらゆる現場での環境改善を目指しています。ここでこの3つの柱について詳しく見ておきましょう。

参考/厚生労働省「働き方改革」の実現に向けて

労働時間の是正

労働時間の増大は従業員のパフォーマンスを下げてしまうため、企業全体で生産性の低下に繋がる可能性が高いです。そればかりか従業員がプライベートの時間を十分に確保できなくなり、リフレッシュや休暇が不足することで心身の健康状態を損なう恐れもあります。

働き方改革では時間外労働について上限を設けることで、従業員に過度な負担がかからないよう配慮する仕組みを作りました。具体的には「月45時間・年360時間以内(36協定)」という基準が設けられており、特別な事情がある場合についても「月100時間未満・年720時間以内・複数月平均残業時間80時間(特別条項付き36協定)」を限度としています。

正規・非正規間の格差解消

日本は正規雇用と非正規雇用の待遇格差が大きいことも問題視されてきました。非正規雇用の労働者は増加傾向が続いており、2023年時点では労働者全体の約40%を占めると言われています。

賃金・福利厚生・雇用の安定性など、様々な点における正規雇用と非正規雇用の格差を埋めることも働き方改革の重要な取り組みです。中心となるのは「同一労働同一賃金」と呼ばれる考え方で、雇用形態に関わらず同一価値の労働に対して同水準の対価を支払う環境やガイドライン作りが進められています。

多様で柔軟な働き方の実現

「定時に決められた勤務先で業務に従事する」という働き方は、時代が進むに連れて柔軟に変化させる必要性が高まりました。育児・介護との両立はもちろんですが、2020年に端を発する新型コロナウイルスの流行も大きく影響しています。

いわゆる三密を避けるために講じた対策が結果的に多様な働き方の実現に繋がったため、従来の働き方からそのまま移行する動きも多いのです。時間や場所を問わずフレキシブルに働ける環境作りはもちろん、ライフステージの変化で有利不利が発生しない公平な転職市場の形成も求められています。

働き方改革の課題

アイデア

働き方改革は日本のビジネスシーンにおいて急務である一方、実施に際して気を付けておきたい課題点もいくつか存在します。自社で効果的な取り組みを実現するために、以下のポイントには注意を払っておきましょう。

人件費やツール導入でコストがかかる

働き方改革を実現するには多くの人間の協力や、新しくシステムを導入する必要があるため多額のコストがかかる可能性があります。例えば前述の同一労働同一賃金の原則に従って、非正規雇用従業員の給与を見直すだけでも人件費が上がる企業は多いでしょう。

従業員が休みを取りやすい環境作りも大切ですが、休んだ人の業務が他の人のしわ寄せになると残業代がかさむ可能性もあります。

業務効率化のためにIT機器・オンラインアプリ・クラウドサービスなどを導入する際は、初期費用だけでなくランニングコストも考慮した上で現実的なコストを把握しておきましょう。いきなり全体の改革を進めるのではなく、社内の一部でスモールスタートさせるのも有効です。

成果制度導入による弊害

働き方改革では人事評価の基準を「年功序列」から「成果主義」に切り替えるケースも珍しくありません。注意したいのは「高度プロフェッショナル制度」と呼ばれる仕組みです。同制度では高度な専門知識を活かして職務にあたり、一定以上の収入を得ている従業員の報酬を労働時間ではなく成果で評価します。労働基準法で規定されている残業時間・残業代・休日などの規制対象から外れるという点が特徴で、金融商品・コンサルティング・研究開発といった分野が対象となっています。

同制度は対象従業員が「短い労働時間」と「少ないリソース」で成果を出せるように工夫するため、生産性向上が期待できます。しかし従業員を労働時間で縛らないということは、逆に「長時間働かせても違反にならない」ということも意味します。残業代も支払われないため、運用方法を誤るとかえって長時間労働や相対的な賃金低下に繋がってしまうのです。

成果が出ないからといって従業員を長く働かせる環境が常態化しないよう、細心の注意を払いましょう。成果に対する明確な評価基準を設けることも大切です。

従業員のモチベーション低下

働き方改革で大切なのは、「従業員が主役である」という前提を忘れないことです。施策上は働き方改革をなぞっていたとしても、それが従業員にとって本当に喜ばしい結果になるとは限りません。

例えば長時間労働是正のために残業を厳しく制限すると、今までもらえていた残業代がなくなるため手取り収入が目減りする従業員が出てきます。残業時間削減の一方で業務効率化が追い付いていなければ、仕事を自宅に持ち帰らざるを得ないケースも発生するでしょう。こうした事態は従業員の仕事に対するモチベーション低下を招きます。

制度を作るだけ作って運用を放置するのも危険な状態です。制度の未実施や運用不備は環境改善を期待していた従業員から不信感を買ってしまい、モチベーションの低下はおろか人材流出のリスクも高まります。働き方改革は社内の実情に合った姿で推進することが大切なのです。

生産性の低下

働き方改革は逆説的に一時的な生産性の低下を招く可能性があるので留意しましょう。残業時間の削減で実働時間が減少することにより、成果や売上が従来よりも落ちるケースは少なくありません。

働き方改革によって多様な人材を自社に受け入れるようになれば、それだけ人材育成にかけるコストも増えていくでしょう。本来コア業務に割くべき人的リソース・労働時間・コストが分散すると、全体の生産性低下に繋がってしまうのです。働き方改革は業務プロセスの整理や定型業務の自動化など、業務効率化が前提であると考えておきましょう。

管理職の負担増加

現場を仕切る管理職は残業時間が減った分の労働力をカバーするために仕事配分を考えたり、従業員の就業実態を把握したりするのも務めです。管理職は働き方改革によってマネジメント面でのタスクが増えるため、従来の業務量を抱えたままでは単純に負担が大きくなるでしょう。

部下の残業が減った分を管理職が残業で補おうとするケースもあります。法律上「管理監督者」に該当する人は、労働基準法における労働時間・休日・残業代に関する規定が適用されません。具体的にどの職を管理監督者とするのかは、実際の業務内容や権限の大きさによって判断が必要になります。

管理職や管理監督者の負担を増やさないためには組織全体で労働時間や業務状況を把握する仕組み作りや、個々の従業員の意識改革が重要です。

働き方改革の取り組み方

ステップ

働き方改革を成功させるためには、理に適ったプロセスで着実に取り組みを進めていくことを意識しましょう。以下に一般的なプロセスを紹介するので、自社で実施する際の参考にしてみてください。

1.自社の現状把握と課題を洗い出す

まずは自社が抱えている課題や現場の状況を正確に把握して、働き方改革で必要となる要素を見極める下地を作りましょう。大切なのは「見える化」「現場の声」の2点です。

頭で分かっているつもりでも、視覚化して初めて分かることは少なくありません。例えば社内全体の業務フローや就業記録などは視覚化して全体増を掴むことで、無駄の多い部分や足りていない要素を見つけやすくなります。

それだけでは机上の空論になり兼ねないので、従業員へのアンケートやヒアリングを実施して現場の声に耳を傾けましょう。非効率な業務や労働時間の実態を把握するためには、実際に働いている人の意見が参考になります。

2.目標を決めて共有する

十分な情報が集まったら、働き方改革の目標・ゴールを明確にして社内全員で共有してください。働き方改革は経営層の取り組みだけでは実現し得ないので、労使の間でしっかり認識を共有しておくことが大切です。

目標設定においては「従業員からの理解や納得が得られる内容」「実施の理由」「達成までの期限」の3点を抑えておきましょう。具体的なゴールが見えている取り組みは、規模が大きくても社内全体のモチベーションを高く保ちやすいです。

一度に多くのゴールを設定すると現場の混乱や負担増を招く可能性もあるので、優先順位を設けて少しずつ取り組む方法も検討してみてください。

3.業務内容の見直し

働き方改革の効果を最大化させるためには、業務内容の無駄を省くことが大切です。従業員が働きやすい環境を整えても、非効率な業務が残ったままでは誰かにそのしわ寄せが行きます。

業務内容を見直す際は局所的な検証やその場しのぎの対策ではなく、ワークフロー全体を抜本的に見直すように心がけてください。

各業務の「重要性」と「優先度」をスコアライズして、必要ないものは思い切って削減していきましょう。仕事量の偏りや効率化の可否についても、現場の意見を聞きながら入念に検討してください。

4.改善のための計画を立てる

社内一丸となって働き方改革に取り組むには、目標達成のための計画を立てる必要があるでしょう。従来のワークフローから働き方改革で見直したものへ移行する際は、いきなりすべてを変更するのではなく徐々に入れ替えていくのが一般的です。

現実的な計画を立てるために、ここでも従業員の声を頼りにしながら具体的な優先順位・人員配置・期間を決めてください。計画を実行しながら定期的に上手くいった点・改善すべき点を振り返っておけば、後々PDCAサイクルを回す際に有用なデータが蓄積していきます。

働き方改革の企業成功事例

ラフな社員

働き方改革は既に多くの企業で実践されているため、成功事例を参考にすると自社でのイメージを描きやすくなります。以下では国内の働き方改革の成功事例をいくつか見ていきましょう。

ヤフー

ヤフーでは多様な働き方を促進する目的で新しい休暇制度を創設しました。例えば祝日が土曜日に重なった場合、前日の金曜日を休日として三連休を確保する「土曜日祝日振替休暇」が認められています。

勤続10年以上の従業員に対しては、キャリアを見直すために最長3ヶ月の休暇を取れる「サバティカル休暇」が与えられました。地域社会など第三者が抱える課題を解決するために使える有給休暇「課題解決休暇(最大年3日)」も設けられています。その結果、従業員は家族や社会と関わり合いながら多様な働き方を実現しています。

永和システムマネジメント

主にソフトウェア開発を手がける永和システムマネジメントもまた、休暇制度を充実させて働き方改革に乗り出しています。半日有給休暇制度の導入で午前・午後を問わず4時間分の融通が利くようになり、子どもの送り迎えや病院などプライベートと仕事を両立しやすい環境が整えられました。

有給休暇は3日連続まで取得可能とし、旅行や引越しといったイベントにも柔軟に対応可能です。これらの取り組みにより全部署で年次有給休暇取得率が50%以上になりました。

すかいらーく

人材不足が深刻化している飲食業界において、すかいらーくグループの働き方改革はしっかりと成果を上げています。同グループでは24時間営業の原則廃止、メニュー改定の回数を削減するなど従業員の業務負担軽減に努めました。

また、一度退職した人の復職を積極的に受け入れる「おかえり採用」も導入しています。その結果、負担軽減によって従業員満足度や人材定着率が向上しました。

花王

花王では育児休暇制度に重点を置いた働き方改革を実施しています。特徴的なのは「メリーズタイム・プラス」と呼ばれる時短勤務制度で、子どもの1才4月末日まで最大1日4時間・週3日まで勤務時間および出勤日数の短縮を可能としました。

さらに男女共通で10日間の育児有給休暇を設け、完全取得を必須としています。他にも看護・介護特別休暇や在宅勤務体制の整備など、多様な働き方に対応する環境作りが行われているのです。

メルカリ

フリマアプリ大手のメルカリも、育児休暇の整備によって従業員のワークライフバランスを取っている企業です。同社は産休期間の延長に加えて、男女ともに産休・育休中の給与を100%保証するという手厚い経済支援を実施しています。

女性は産前10週間・産後約6ヶ月間の給与が、男性は妻の産後8週間の給与が保証される仕組みです。この制度によって出産というライフステージの変化にかかる費用や、休職による収入減という経済的不安を払拭することに成功しています。社内の有給取得率は約80%に上りました。

働き方改革の15の施策例

OKマークの社員

働き方改革に様々なアプローチ方法があるので、以下では一般的な施策例を列挙してそれぞれざっくりと説明します。

1.男性社員の育児休暇取得促進

女性は家庭・男性は仕事という旧来の概念から脱却し、男性の積極的な育児参加を促すことは働き方改革の大きなポイントです。

男性従業員が育児休暇を取得しやすい環境作りはジェンダー推進やワークライフバランスの調整など、従業員の長期的なパフォーマンス向上や離職率低下に効果が期待できるでしょう。

ジェンダー問題は世間的な関心も高く、積極的に取り組む企業は求職者から意識の高さが評価される傾向があります。

2.女性社員の育休明けの職位保障

女性が出産する場合は一時的な職場離脱を余儀なくされるため、復職時にそれまでのキャリアを中断させることなく職位を保障することが大切です。

安心して育児に集中させてくれる職場は従業員の帰属意識も高くなります。人生経験を積んで一回り大きくなった女性従業員が職場に復帰してくれることは、多様な価値観や優秀な職務スキルを現場に保持することにも繋がるのです。

3.企業内保育所

育児支援の施策として社内に保育所・託児所を設ける企業も少なくありません。仕事中も近場で子どもの面倒を見てもらえているという安心から、従業員のパフォーマンス向上が期待できます。

男性従業員の育児参加にも効果的なので、ダイバーシティ構想実現やワークライフバランス向上へも繋がる施策です。施設維持や人件費も考慮する必要があるので、設置の際はコスト管理に細心の注意を払いましょう。

4.親子出勤制度

子どもと一緒に出勤して仕事をしながら面倒を見るという親子出勤・子連れ出勤制度を導入する企業も見受けられます。ワークライフバランスの調整という意味合いも大きいですが、子どもが親の職場に理解を深めることで家族間でのコミュニケーション促進というメリットもある施策です。

企業が家庭環境に配慮することで従業員のロイヤリティ向上も期待されています。ただし、現場の理解や設備整備といった課題も多いデリケートな施策とも言えるでしょう。

5.介護テレワークの推進

少子高齢化社会の現代日本では、仕事と介護の両立に悩む労働者も少なくありません。大切な家族を自分で介護しながら仕事を続ける、そのために活用されているのがコロナ禍で浸透したテレワークです。

自宅を作業場とすることで仕事と介護を行き来しやすくなるので、休職の必要がなくなり長期的なキャリア形成や離職率低下に繋がります。

介護テレワークでは従業員の過度な介護負担やブラックボックス化による長時間労働が懸念されているのも事実です。従業員を自宅に孤立させるのではなく、必要であれば職場や専門家からサポートを提供できる環境を整えましょう。

6.就業時間の調整

従業員個々のライフスタイルに即して就業時間を調整できるようにすれば、ストレス軽減やクリエイティブな仕事が実現します。

家庭との両立も促進するため、結婚や介護といったライフステージにも対応可能です。一般的にはコアタイムを設けて出勤・退勤時間を任意で調整するフレックスタイム制が導入されています。

7.リモートワーク導入

リモートワークで従業員が自宅・カフェ・コワーキングスペースなど快適な環境で仕事に取り組むことにより、生産性の向上・オフィスの運営コスト削減・ワークライフバランス向上といった様々なメリットが期待できます。

従業員は通勤が必要ないためエリアに縛られない会社選び・働き方が可能になり、企業としては幅広い地域からの人材獲得にも繋がるでしょう。環境構築にはそれなりのコストや手間がかかりますが、大きな効果が見込める施策です。

8.直行直帰の励行

営業職のように外回りが多い職種では、直行直帰の推進も進められています。通勤時間の削減によって負担軽減やプライベートタイムの確保へ繋がり、従業員は生活の質が向上させることができるのです。

移動手段に使用されるエネルギー資源の無駄を省けるので、環境への負荷軽減も期待できます。場所を問わず打刻可能なITツールの導入や、労働時間管理のルールを明確にしておくのがポイントです。

9.有休取得促進

収入に支障を来たさずに休みを取れる有給休暇は、法律で認められている従業員の権利です。定期的な休息を取ることでストレス軽減・心身リフレッシュ・仕事のクオリティや創造性向上をもたらします。

中長期的に見ると健康管理にも重要なポイントです。制度を作るだけでなく、従業員が気兼ねなく有休を申請・取得できる雰囲気作りにも務めましょう。

10.賃金見直し

賃金は従業員の生活水準を維持・向上させるために重要な要素であり、仕事に対するモチベーションにも直結します。企業としては従業員が上げた成果や貢献度に対して、適切な評価と報酬を用意することが大切です。

社内で賃金に対する不満が多い場合は、速やかな賃金改定や評価制度の見直しなどが求められます。基本給だけでなく各種手当てや賞与についてまんべんなく見直して、従業員に納得してもらえる仕組みを作ってください。

11.上司との1on1の実施

働きやすい職場では従業員と上司の円滑なコミュニケーションが取れています。定期的かつ直接的なコミュニケーションの場を設けて、個々の従業員が持つニーズ・課題・キャリアの希望を把握しましょう。

それらに応じて適切なサポートを提供することで、従業員満足度やエンゲージメントの向上が期待できます。1on1ミーティングを成功させるには、上司側の傾聴力やコーチングスキルが重要です。部下が緊張しないように、秘匿性を確保しながらもある程度開放感のあるスペースを選びましょう。

12.定期的な従業員満足度調査

経営層と現場で認識の齟齬を発生させないためには、定期的にフィードバックを収集して従業員満足度を調査する必要があるでしょう。

現場の声に基づいて職場環境の整備を行うことで、帰属意識やモチベーションを高めることが可能です。従業員が抱える不満や現場における問題点の早期発見・対策も実現します。アンケート調査を行う場合は匿名記入でプライバシーに配慮するのが基本です。

13.健康に役立つツールの導入

仕事の資本は従業員の健康な心身であり、それを維持するためのサポートも企業の務めです。健康管理アプリやフィットネスクラブの割引サービスなど、従業員が自発的に健康管理を行える手助けを行いましょう。

長期的に見ると病気やケガによる欠勤減少や生産性向上など、企業にとっても大きなメリットが返ってきます。健康優良企業の認定取得に取り組めば、自ずと従業員の健康管理に対するノウハウが蓄積していくのでおすすめです。

14.コミュニケーションツールの導入

テレワークやリモートワークが広く浸透する中で、従業員間や管理職との円滑なコミュニケーションを実現する連絡手段は重要なポイントです。

一般的には例えばスラック・マイクロソフトチームズといったツールを活用したシームレスなコミュニケーションによって、効率的な仕事やチームワーク向上が図られています。ITリテラシーは従業員によって差があるため、できるだけシンプルで使いやすいツールを選ぶのがベターです。

15.業務の見直しやシステム化

働き方改革ではマクロな視点で業務プロセス全体の効率化・自動化が求められます。従業員の負担軽減はコア業務へのリソース確保に繋がるため、価値の高い仕事へ時間を割けるようになります。

AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入といったテクノロジーの導入も視野に入れ、ルーチンワーク自動化・エラー減少・業務の透明性向上を実現しましょう。働き方改革の中でも比較的ポピュラーな施策ですが、実施は大掛かりなものになるので入念な検証が大切です。

働き方改革のメリット

メリット

働き方改革には企業・従業員それぞれのメリットがあるので、ここからはそのメリットについて個別に紹介します。

企業にとってのメリット

働き方改革の実施主体である企業にとっては、次のようなメリットがあります。

生産性の向上

働き方改革における業務効率化はテクノロジーを活用した自動化・システム化も多いです。定型的なルーチンワークに費やす時間が減れば、コア業務へのリソースが増えます。

また、長時間労働の解消など従業員が働きやすい環境の整備は仕事のモチベーションや自社へのエンゲージメント向上にも効果があり、直接的な生産性向上に繋がるのです。

前述の通り準備不足のまま働き方改革を実施すると、かえって生産性が低下してしまうので十分注意してください。

雇用の柔軟性

パートタイム・契約社員・フリーランスなど雇用形態を問わず幅広く人材を受け入れることで、各業務に適した人材の確保・配置が可能となります。

リモートワークの推進は地理的な制約を受けずに優秀な人材を獲得できるため、運用次第では海外在住の人材活用も実現するでしょう。雇用の柔軟性は労働者不足が深刻化している現代日本において、大きなアドバンテージとなります。

従業員の健康とウェルビーイング

健康診断・ストレスチェック・メンタルヘルスケアといった予防措置により、従業員の健康問題を未然に防ぐことができます。万が一症状が出ている場合でも早期発見が可能なので、被害は最小限に抑えられるでしょう。

「柔軟な労働時間」と「休暇制度の充実」は、ワークライフバランスの調整に重要な要素であり長期的な健康維持に寄与します。心身だけでなく社会的な健康も含めたウェルビーイングの意識を持って働き方改革に臨みましょう。

ブランド価値と企業イメージの向上

働き方改革は企業の社会的責任を示す「CSR」の一環として捉えられており、外部からの評価に大きな影響をおよぼします。良好な労働環境の周知が進めば、新卒者や経験豊富な専門家からの関心が高まり自然と優秀な人材が集まりやすくなるでしょう。

インターネットによって誰もが手軽に情報が仕入れられるようになった現代では、こうしたイメージ戦略の重要性も高まっています。

イノベーションの促進

働き方改革では「自由度の高い労働環境整備」や「多様性の尊重」が進むため、現場では新しいアイデアが生まれやすいクリエイティブな土壌が作られます。

さらに外部のスタートアップや研究機関とパートナーシップを結べば、新しい技術・考え方を自社に取り入れることも難しくありません。モノやサービスが充実している世の中では、「新たな価値」を作り出すイノベーションこそが大きな武器となるのです。

従業員にとってのメリット

働き方改革の影響をその身で受ける従業員には、以下のようなメリットが期待できます。

ワークライフバランスの改善

従業員は勤務時間の調整やリモートワークといった選択肢により、家族との時間や個人的な興味・関心を犠牲にせずワークライフバランスを保てるようになります。

仕事に起因するストレスの減少やリフレッシュ時間の確保により、生活全般の質が向上していくでしょう。仕事のパフォーマンスを向上させるためには、逆にプライベートを充実させることも大切なのです。

職場のストレスの軽減

働き方改革によってメンタルヘルスケアのプログラムやEAP(従業員アシスタンスプログラム)が充実すれば、従業員は自身のストレスを管理しやすくなります。

労働時間が適切に管理された働きやすい環境は、過度なストレスや疲労蓄積から解放される理想の職場となるでしょう。職場で感じるストレスの多くは仕事の量・質によるものとされています。長時間労働や残業解消が先行して仕事だけが残ってしまわないように十分注意してください。

キャリアパスの多様化

働き方改革では企業が各従業員のキャリアパスをサポートし、各人の持つ興味や強みに合ったプランを提供します。個人の意思が尊重されるため、従来よりもキャリアパスが多様化して自分の可能性にチャレンジできるのです。

社内異動やプロジェクト参加の機会も増えるので、幅広い経験を積むことでスキルアップや視野拡張にも効果が期待できます。自分を成長させてくれる企業には、優秀な人材が定着しやすいものです。

職場の満足度向上

評価制度の見直しにより公平性・透明性が改善されれば、仕事へのモチベーションは高まり職場に対する満足感も向上します。

仕事のパフォーマンスに基づく報酬や、成果を正当に評価する企業風土は従業員の努力を承認・肯定することと同意義です。「自分の仕事が認められている」と実感できる職場は、労使間の信頼関係構築に大きく寄与します。

個人の成長と発展

働き方改革で企業が提供する教育プログラムやスキルアップトレーニングは、従業員が専門性を高めるための心強いサポートになります。

経験豊かな先輩従業員や外部の専門家が指導を行うメンター制度およびコーチングでは、より一層実践的な知識・ノウハウが身に付けられるでしょう。わざわざスクールや通信講座を探して受講する手間がかからないため、従業員は最小限の負担で効率的に成長できるのです。

働き方改革のデメリット

デメリット

上記で挙げた豊富なメリットの一方で、働き方改革は運用次第でデメリットも発生する可能性があります。以下の点に注意しながら、効果的な施策実施を目指してください。

企業にとってのデメリット

働き方改革が企業にとってデメリットになるのは、以下のような点です。

初期投資の増加

施策の初期段階では新たなテクノロジー・ソフトウェア・職場環境の再構築・教育プログラムなど、様々な面で多額の費用が必要になってきます。

特に中小企業にとっては大きな負担になる可能性があるため、コストパフォーマンスに長けた製品の選定やスモールスタートによるコストの時間的分散も検討しましょう。

管理の複雑化

働き方改革では業務に関する管理全般が複雑化する可能性もあるので留意しましょう。例えばリモートワークの場合、業務監督や日常的なコミュニケーションが難しいケースもあります。

プロジェクトの進捗状況をリアルタイムで把握できない、従業員のパフォーマンスを評価する基準が曖昧になるといった事態も想定されるでしょう。業務報告の仕組み作りやITツールの積極的な活用がカギです。

セキュリティリスク

従業員が自宅や公共施設で作業すると、自社の機密情報が外部に漏れるリスクが増加します。セキュリティ対策を強化するためには専用ソフトの追加やセキュリティ対策が強固なツール選定など、コスト増も覚悟しておきましょう。

機密情報が入ったデバイスの扱いについては、明確なルールを作り徹底することも大切です。

従業員間の不平等

リモートワークや柔軟な勤務体系は、すべての従業員に適しているとは限りません。職種・役割によってはオフィス勤務が必要な場合もあるでしょう。

従業員間で不平等感や摩擦が生じるリスクがあるので、施策が適用されない従業員への代替案やケアにも注力してください。

従業員にとってのデメリット

働き方改革における従業員の懸念点は以下の通りです。

ワークライフバランスの崩壊

本来ワークライフバランスを整えるための施策が逆効果となるケースがあります。在宅勤務が増えると仕事と私生活の境界が曖昧になり、自宅で仕事モードが抜けなくなるというパターンです。

これは過労やバーンアウトに繋がるリスクがあるため、メリハリを付ける意識付けが求められます。

孤立感の増加

オフィス外作業が長引くと、同僚や上司とのコミュニケーションが不足しがちになります。

チーム内の連帯感の喪失や従業員の孤立感に繋がるため、スラックやラインなど手軽に連絡できるツールでこまめなコミュニケーションを図りましょう。

キャリア進展の不安

リモートワークは顔の見える対面コミュニケーションが減少するため、昇進や新しいプロジェクトへの参加機会を逃す恐れもあります。

「目に見えない者は心にもない」という問題にも直結するため、企業側の管理体制や積極的な働きかけが求められるでしょう。

働き方改革は準備段階から本腰を入れることが大切!円滑な実施には外部サービスの導入も視野に入れよう

在宅勤務では技術的問題やシステム障害に直面することも珍しくありません。適切なサポートが用意できていなければ、これらが従業員にとって大きなストレスになるでしょう。

働き方改革を実施する際は、事前準備やトラブル対策を入念に行うことが大切です。また、社内の福利厚生や労働環境改善には外部サービスの導入も有効と言えます。パートナー選びに迷ったら、健康経営や企業内売店に長けた心幸グループに相談してみてください。

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