備蓄米制度とは?政府の目的や2025年の備蓄米放出の経緯、今後の展望を解説

こんにちは!福利厚生の強化や健康経営をサポートする心幸グループです。
2024年よりコメの価格高騰が続き、以前と比較すると2倍近い価格である上に品薄が続いている状況は、コメを主食とする日本人にとっては深刻な問題です。「令和の米騒動」とも呼ばれる状況の中で注目されたのが、備蓄米制度です。 なぜ今年、備蓄米が放出されたのでしょうか。
本記事では備蓄米制度の基本情報に加えて、2025年に初めて行われた備蓄米放出の経緯と今後の展望を解説します。
福利厚生/健康経営/意識調査等に関するお役立ち情報資料(無料)をダウンロードする〉〉
目次
備蓄米とは?

備蓄米とは、不作の年でも安定供給できるように国が備蓄しているコメ「政府備蓄米」のことです。10年に一度の不作時でも供給できる量として、約100万トンのコメが備蓄されています。毎年、政府は約20万トンのコメを買い入れて5年分を保管しています。5年間の保管期間を過ぎた備蓄米は、家畜の飼料、または加工用のコメとして販売されます。
なぜ国でコメを備蓄するようになったのか、まずはその背景や目的、保管について解説していきます。
備蓄米制度の背景と目的
備蓄米制度は、1995年に「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」が制定された際にスタートしました。この法律が制定されたのは、1993年の夏の冷害によって引き起こされたコメの大凶作、いわゆる「平成の米騒動」がきっかけです。この年は深刻なコメ不足に陥り、当時はタイ米などを緊急輸入しましたが、輸入米が口に合わない日本人が多く、売れ残ってしまいました。このような過去の事例を教訓に制度化されたのが、備蓄米制度です。
備蓄米制度の目的は、平成の米騒動のような凶作時に対応してコメの価格を安定させること、そして災害発生時などの緊急時へ備えることです。実際に、自然災害発生時に備蓄米が販売された実績がありますが、コメ不足を理由として備蓄米が放出されたのは、2025年のケースが初めてです。
参考/農林水産省「備蓄米制度(びちくまいせいど)について教えてください。」
備蓄米の保管場所と保管期間
備蓄米は、日本全国約300ヶ所の政府寄託倉庫に玄米の状態で保管されています。1ヶ所にまとめて保管していると、災害発生や物流トラブルが発生した際に米の供給がストップする可能性があります。そのような緊急時でもコメを供給できるよう、備蓄米の保管場所は全国に分散しています。
備蓄米が保管されている政府寄託倉庫は国の施設ではなく、国が契約した民間事業者の施設で、倉庫の場所は公開されていません。備蓄米は鮮度を保てるよう、適度な湿度を保った15度以下の政府寄託倉庫で保管されています。低温環境で保管すると長期間鮮度を保てるので味が落ちることを防げるほか、カビや害虫の発生も防げることから、備蓄米は放出されるまで収穫したての良好な品質を保てます。
備蓄米の保管期間は、保管方式によって異なります。保管方式は出来秋以降に50万トンを買い入れて1~2年保管後、同量を主食用として販売する「回転備蓄方式」、買い入れ時期を柔軟に設定でき、買い入れ後のコメを数年間保管後に飼料用などを主として販売する「棚上げ備蓄方式」の2種類があります。
備蓄米は、2011年までは回転備蓄方式を取っていました。しかし、需要の調整が必要となることなどを理由に、2011年以降は棚上げ備蓄方式に転換されています。つまり、かつての備蓄米は1~2年の保管期間でしたが、2011年以降は5年間の保管期間となっています。

備蓄米放出の判断基準

これまで、農林水産省では備蓄米放出の判断基準をコメの不作による供給不足、または災害時などの緊急時のみに限定していました。
しかし、2024年から続くコメの流通停滞と値上がりに対応するため、2025年に流通不足を理由とて備蓄米を放出できるよう、運用方針の見直しが行われました。農林水産省が公表している「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」によると、見直し後の備蓄米運用方針では、農林水産大臣が必要と認めた場合に備蓄米の放出を決定することを追加条件としています。
なお、コメの低価格状態が長期間続くことを避けるため、流通不足を理由に備蓄米を放出した場合は、同量・同品質のコメを買い戻すという条件が付けられています。
参考/農林水産省「米の備蓄運営について①」
農林水産省「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」
過去に備蓄米が利用されたことは?
以前の備蓄米運用方針は、前述したようにコメの供給不足または災害時のみでした。現在の制度がスタートした2011年以降、備蓄米が利用されたのは2011年の東日本大震災、そして2016年の熊本地震の2回です。それぞれ、東日本大震災では約4万トン、熊本地震では約90トンの備蓄米が流通業者向けに販売されました。
その他には、2024年に米菓原料としてのコメ不足が起こった際に、加工用として備蓄米が約1万トン販売されています。

2025年の備蓄米放出の経緯

これまで、主に災害時にのみ放出されてきた備蓄米ですが、2025年、初めてコメの価格高騰とコメ不足を理由として放出が決定されました。すでにオンラインショップやスーパーなどで販売されていることをご存知の方は多いでしょうが、備蓄米が家庭に届くまでにどのような流れがあったのでしょうか。
1月:備蓄米制度の運用方針見直し
前述の通り、備蓄米の放出はあくまでも災害時などの緊急時、コメの不作時などに限定していました。2024年夏頃からコメの価格は右肩上がりを続け、前年比で2倍近い高値を記録しました。
コメの価格が高騰すると、コメを使った加工食品などの値上がりも発表されるなど、コメの価格高騰が生活に大きく関わる問題となったことから、農林水産省は従来の備蓄米制度の運用方針の見直しを行ったというわけです。 そしてコメの価格高騰対策として、大手集荷業者を対象に100万トンの備蓄米のうち21万トンの備蓄米の放出が決定されました。
3月:備蓄米の入札実施
備蓄米の売り渡しは、一般競争入札で行われていました。最も高い額を提示した業者が落札できる方式なので落札価格が下がりにくいという問題があったため、9割以上が落札されたものの、コメの価格を下げるきっかけにはなりませんでした。
備蓄米が落札されたというニュースが流れた後も、市場にコメが並ぶことはほとんどありませんでした。これは、備蓄米の9割以上を落札したJA全農にコメが滞留していたことが大きな原因といわれます。そのため店頭に並ぶコメの価格が下がることも消費者に届くこともほとんどなく、備蓄米が放出されたにもかかわらず状況が変わりませんでした。
5月:備蓄米の入札方式を随意契約に変更
コメの価格にかかわる状況が変わらない中、備蓄米の放出を決定した江藤農水大臣が失言により更迭され、後任の小泉農水大臣が備蓄米の入札方式を一般競争入札から随意契約に変更しました。随意契約は米の販売価格を政府が決定できるため、一般競争入札での落札価格よりも低い価格で設定すれば安い価格で備蓄米を販売でき、コメの価格を下げる効果が期待できます。また、一般競争入札よりも少ない手続きで販売できる点もメリットです。
入札方式の変更後、5月下旬に随意契約で売り渡された備蓄米の申し込みが開始され、一定の条件を満たす中小スーパーや米穀店向けに計8万トンが売り渡されました。
6月:備蓄米の流通開始
随意契約で売り渡された備蓄米が、小売店やオンラインショップなどで流通が開始しました。当初は小売店に長蛇の列ができたりオンラインショップで即売り切れなどの状態が続いていたりしましたが、8月現在は比較的購入しやすい状態となっています。

備蓄米とコメ価格の今後は?

主食であるコメ価格の高騰は、日本人の食生活に大きな影響を及ぼすものです。備蓄米の放出によってコメ価格が下がってきてはいるものの、今後のコメ価格はどうなるのでしょうか。
コメの平均価格は下落傾向に
コメの平均価格は、随意契約の備蓄米の流通が開始した後に下落しました。備蓄米を放出した効果が見られたと思われましたが、7月最終週の全国のスーパーで販売されたコメ価格は、10週ぶりに平均価格が上昇しました。これは備蓄米の販売数量が減少し、米価格の引き下げ効果が薄れたことが原因の一つとみられます。
夏の終わり頃から、新米の流通が始まります。新米を確保するために、JAをはじめとする集荷業者は全国の農家に一時的な前払い金として「概算金」を支払っています。概算金は、その年のコメの流通価格の指標の一つといわれます。
今年JAが支払った概算金は地域にもよりますが、昨年比で約30%前後引き上げられています。このことから、今年の新米価格も昨年よりも高くなることが予想されます。
備蓄米は8月末までに売り切り予定
今回放出した備蓄米の販売期限は8月末までとされているため、販売期限が迫っている中で注文をキャンセルする販売業者が相次いでいることが問題視されています。
そもそも、備蓄米は8月末までに売り切ることを条件に売り渡しが行われており、小泉農水大臣は期限まで販売するための対応策を検討すると表明しています。
今後のコメ価格が落ち着くかは不透明
備蓄米の売り切り期限を過ぎた後、9月以降は新米が出回る時期です。今後のコメ価格の上昇が落ち着くかどうかは今年度のコメの供給量次第ともいわれ、まだまだ状況は不透明です。
日本では1970年より、生産過剰となったコメの生産量を調整するため、作付面積を抑えてコメ価格の下落を防ぐ「減反政策」を長く行ってきました。減反政策は2018年に廃止されましたが、その後もコメの生産量は増えず、作り手となる生産者人口も減少が続いています。
そのような中、石破首相は8月5日、需要の見通し不足によりコメの生産量不足を招いたことが価格高騰の原因だったとして、これまでの減反政策を「失敗」だったと認め、コメの増産にかじを切ると政策転換を表明しました。
しかし、単純にコメの価格が下がればいいというわけではなく、米価下落を懸念する農家や議員からの反発を招いているため、コメ増産の方針を表明した後も具体的な増産策に加えて環境整備など課題が山積しています。

まとめ
備蓄米の放出によって、高騰していたコメ価格は一時的に下落に転じました。しかし、備蓄米の販売期限が迫る中で再びコメ価格の上昇傾向が見られます。政府は2017年まで減反政策でコメの生産量を調整していましたが、その失敗を認めてコメ増産への方針転換を表明しています。
コメ増産で供給安定が期待できますが、今すぐ現状を改善できるものではありません。コメの生産を取り巻く状況は不透明で、新米が出回った後のコメ価格や供給量などを見通すことは難しいのが現状です。概算金が引き上げられていることから、昨年以前と同程度まで価格が下落することは期待できず、今年の新米が出回った後もまだ厳しい状況が続くと考えておいた方がいいかもしれません。
福利厚生の強化や健康経営をサポートする心幸グループのお問い合わせはこちら>>


はたらく人を元気にする会社

グループ間協力で、売店・食堂・企業内福利厚生をワンストップでサポートいたします。売店とカフェの併設や24時間無人店舗など、個々の会社では難しい案件も、グループ間協力ができる弊社ならではのスピード感で迅速にご提案します。
心幸グループ WEBSITE