食品・米の物価高はいつまで続く?物価の値上げ地獄における企業のチェックポイントと対策・原因から導く方法を解説

2025年5月時点で、日本の物価高騰は依然として国民生活に大きな影響を与えています。この記事では、最新の物価動向や高騰が続く主な要因と背景、インフレが企業に与えている影響、そして今後の見通しについて解説します。
目次
【2025年5月現在】物価高騰の最新事情は?

2025年3月の全国コアCPI(生鮮食品を除く)は前年比+3.2%と、前月から伸び率が拡大しました。(出典:「2025年3月全国消費者物価」大和総研)特に飲食料品の価格上昇が顕著で、前年に比べて大幅に強まっています。
物価高騰が続いている主な要因は、原材料費の高騰や円安の影響、人件費の上昇などが深く関わっています。
また過去のコラム記事『【2025年1月】来月以降も値上がりをするもの! 食品や飲料など商品一覧と値上げの原因をチェック。企業ができる取り組みを解説』にて解説した生活に密着する食品や飲料などの値上げも継続しています。
政府は住民税非課税世帯(低所得世帯)を対象に給付金を支給するなどの対策を講じていますが、一時的な効果にとどまっています。今後も物価と賃金のバランスを保ちながら、持続可能な経済成長を目指す動きが続くと見られています。
2025年の物価高騰(インフレ)が起きている原因・背景を解説

2025年の物価高騰(インフレ)が起きている原因・背景について、個人の生活や企業に関連が深い5つの視点から解説します。
エネルギー価格の高騰
中東情勢やロシアとウクライナの戦争継続による原油や天然ガスの供給不安、OPEC諸国が減産を継続などの背景により、原油や天然ガスといったエネルギー資源の価格が世界的に高止まりしていて、日本のようにエネルギーを海外に依存している国では、光熱費や輸送費など幅広い分野でコスト増をもたらしています。
供給不安が価格を押し上げているほか、日本においては円安為替も影響を受けています。
円安の進行
2024年後半から2025年にかけて、円は対ドルで急速に下落しています。これは日米金利差や日本銀行の金融政策の変化への市場の期待感が要因と見られています。日銀の金融緩和政策(緩やかな正常化)により、円が買われにくい状況も継続していると言えるでしょう。
円安は、輸入品の価格を押し上げます。食品や日用品、エネルギー価格にも波及するために家計の負担を大きくしているのが現状で「輸入インフレ」として物価全体を引き上げています。
人件費の上昇と人手不足
少子高齢化の進行によって、国内では慢性的な人手不足が深刻化してきています。特に物流、小売、介護、建設などの労働集約型産業では人件費の上昇が避けられず、企業はコストを価格に転嫁せざるを得なくなっています。
2025年の春闘では、多くの企業が賃上げを実施しました。物価と賃金の「好循環」は進みつつありますが、生活必需品の値上がりは逆に家計を圧迫しているのが現実です。
またコロナ後のリベンジ消費や物流ニーズ増加も影響し、外食、流通、サービス業などで価格転嫁の影響が大きくなっています。
物流・サプライチェーンの制約
コロナ禍からの回復に加えて、地政学的リスクや気候変動による災害の影響で世界的な海運混乱などから国際物流が不安定な状態が続いています。
国内でもトラック運転手不足や「2024年問題」(働き方改革による労働時間制限)によって物流網に制約がかかり、輸送コストが上昇しています。こういった輸送コストが商品価格にも反映されて、インフレを後押ししている面もあります。
また半導体や資材の供給不足が一部で続いていることから、特に製造業で原価上昇が継続中です。
企業による価格転嫁の定着傾向
かつての日本では、コスト増加分を価格に反映させる「価格転嫁」を行うのが難しい状況が続いていましたが、2020年代に入ってからは、企業の値上げ姿勢が定着し始めています。いわゆる「値上げできない構造」が薄れ、企業も価格転嫁に積極的で、消費者側にもある程度の「値上げ慣れ」が広がりつつあると言えるでしょう。
顧客側も「物価は上がるもの」という認識を持ち始めたことや企業の収益確保が求められている点があり、社会の認識として値上げが「当たり前」になりつつあります。
2024年以降続く食品・米の物価高騰が企業に与える影響とは?

2024年以降の日本では食品価格、特に米の価格が大幅に上昇し、企業活動に多方面で影響を及ぼしています。主な影響を5つの視点から解説します。
原材料費の上昇によるコスト圧力
令和6年産の米の平均取引価格は25,876円(出典:「令和6年産米の相対取引価格・数量について(令和7年3月)」農林水産省)と、前年より大幅に上昇しました。この価格上昇は食品メーカーや外食産業にとっては原材料コストの増加を意味していて、企業の利益圧迫要因となっているほか、飲食業、食品製造業、弁当・惣菜業者などを直撃しています。
自社製品の原価率が上昇すれば、利益率の悪化が生じます。
価格転嫁の難しさと消費者離れの懸念
原材料費の上昇に伴って、企業は価格転嫁を試みています。一部企業では値上げが進んでいる状況ですが、全ての業種・業態で転嫁できるわけではありません。
低価格帯の商品を扱う企業や中小企業は値上げをしにくい深刻な状況で、消費者の節約志向が強まるなか、価格引き上げは慎重に行う必要があります。たとえば外食産業では価格の上昇が顧客離れを招く可能性があり、企業は価格設定と品質維持のバランスを取ることが求められています。
業務用食品の高騰による外食産業の構造変化
食品価格の高騰は、外食産業の運営体制にも変化をもたらしています。多くの飲食店がワンオペレーションや少人数での運営を検討していて、物価上昇への対抗策として効率的な経営体制への移行が進んでいます。
また食材費における高騰は深刻で、過去記事『いつまで続く? 米の価格が値上がりする要因と今後の上昇見通し…まるで令和の米騒動!?』でも解説をしている「米」の高騰によって、米を主力に使う業態では引き続き深刻な打撃を受けています。
従業員向け食事や福利厚生コストの増加
米をはじめとした食材の価格上昇は、従業員の生活費にも影響を及ぼしているほか、企業では給与水準や福利厚生制度の見直しを迫られています。
また社員食堂を設置している企業や福利厚生で食事を提供している事業者では、米や食品の高騰により運営コストが上昇しており、企業は従業員の生活支援に取り組む必要性に対応しながらも苦しい状況に置かれています。
ブランドイメージ・顧客満足度への影響
価格の上昇やサービスの変更は、ブランドイメージや顧客満足度に影響を与えるリスクが潜んでいます。
企業が価格変更を行う際には透明性を持ったコミュニケーションを行いながら顧客の信頼を維持する努力が求められるため、ステルス値上げが進むと、顧客の信頼を損なうリスクが高まります。
物価高(インフレ)への企業・事業所ができる対策方法

長引く物価高騰に対しては、単なるコスト削減ではない「戦略的な対応」が求められます。企業の経営環境は厳しさを増しているなか、利益を確保しつつ持続可能な経営を行うにあたって意識したい実践的な対策を解説します。
【価格戦略】価格転嫁の工夫と透明性
物価高が進む今は、原価上昇分をどのように価格に転嫁するかは企業にとって重要な課題です。値上げを行う場合には、「原材料価格の高騰」「物流費上昇」などの明確な値上げ理由を提示して透明性を担保するほか、「品質を保つため」「従業員の待遇維持のため」など社会的な納得感を得やすい理由も添えると丁寧でしょう。
また、価格転嫁を行う際の工夫として、一度に大幅な値上げをするのではなく小刻みな価格改定で消費者負担を抑えるのも有効です。
価格据え置きで内容量を減らす「ステルス値上げ」ではなく、誠実な情報開示に努める姿勢が、顧客の信頼を守るポイントのひとつです。
【コスト管理】見える化と固定費の見直し
インフレ期には無駄なコストを可視化し、継続的に見直すことが重要です。費用内訳を定期的に「見える化」し、固定費の削減やプラン見直しましょう。
電気代や人件費、外注費などを部門別にコストマップの活用するなどして可視化したり、賃貸物件や契約サブスクリプション、ITサービスなどの固定費も定期的に精査します。また、節電・省エネ設備の導入などでエネルギーコストの削減を図ったり、社員食堂や事業所内のコンビニ運営など「食の福利厚生」も見直しを行いましょう。
【人材活用】効率化と人件費最適化
作業の自動化や省力化で、人手不足と賃金上昇に対する人件費の使い方を最適化しましょう。
柔軟な雇用形態の導入、シフトの適正配置や評価制度の見直しによるモチベーション向上も有効です。また業務を棚卸ししてリソースを利益に直結する部門に再配分したり、業務委託や時短雇用などの多様な雇用形態を活用したりすると効果が出やすい分野です。
さらに、「食の福利厚生」の導入も従業員のモチベーション向上と定着率につながることから有効な施策です。
【商品・サービス開発】ニーズに合った設計と再構築
利益率が高い商品の販売強化や、安さだけに走らない「満足度が高いが原価の低い」新商品開発など、生活者の消費行動の変化に即した商品の再設計や見直しも重要です。
高価格帯商品よりも「手頃で価値が高い」と感じられる価格帯へのシフトや、小容量化や簡易包装で価格を抑えたラインアップの導入のほか、サブスクリプションやパッケージ販売による新たな提供形態によって安定収益化を目指しましょう。
【顧客対応】ロイヤルティを高める施策
消費者が価格に敏感な時期こそ、顧客との関係性の強化が安定した経営を支えます。顧客への感謝の気持ちやサービス強化を目にみえる形で実践しましょう。
メンバーシップ制度やポイント付与(還元)制度、次回割引制度はリピート率を向上させる施策です。またSNSやアンケートで顧客との接点を強化する取り組みも有効です。
【調達・物流】仕入先・ルートの見直しと安定化
資材価格や物流コストの変動に強い体制を構築する取り組みも求められます。
たとえば、安定している仕入先との中長期契約を検討したり多角的な調達ルートを導入したりといった工夫のほか、地元業者との取引強化で輸送費の削減、共同配送や物流アウトソーシングによる配送効率の最適化など小さな取り組みを積み重ねることによっても効果が得やすい分野です。
【財務管理】資金繰りと補助金・助成金の活用
物価高の影響でキャッシュフローが悪化するリスクもありますので、適切な財務対策を講じましょう。業務改善助成金やエネルギー対策補助金などの政府や自治体の支援制度を把握し、最大限に活用するといいでしょう。
また中小企業向けの金融機関との相談で、金利優遇や返済猶予などの条件緩和を模索する方法も財務対策につながります。
物価上昇の見通し:2025年から2027年にかけて

2022年以降の日本では急速に物価が上昇し、多くの企業や家庭に影響を与えてきました。
では今後、物価はどのように推移していくのでしょうか。
日本銀行の「経済・物価情勢の展望」(2025年5月2日版)をベースに、2025年から2027年にかけての物価上昇(消費者物価指数=CPI)の見通しを、年ごとの予測に基づいて解説します。
2025年度:2%台前半で推移
2025年の春闘では多くの企業が前年に続きベースアップを実施し、サービス業や生活必需品の価格が引き上げられる傾向が見受けられました。
一方で、中東情勢や円安の影響により燃料・電気料金などが再び上昇傾向していてエネルギー価格は再上昇している点や、企業が原材料や物流費の上昇分を価格に転嫁する姿勢が強まっていることで消費者物価を下支えしている傾向があります。
これらの要因が重なって、物価上昇率は2%台前半で推移すると見込まれています。
2026年度:1%台後半に鈍化
2026年度には、物価上昇率が1%台後半に鈍化すると予想されています。
その要因として、これまで物価上昇を押し上げてきた輸入物価の上昇が一服し影響が薄れることや、海外経済の減速や通商政策の影響を受けて国内経済の成長ペースが鈍化する見通しが挙げられます。
今後は実質所得の伸び悩みによって消費者が価格に敏感になり、企業の価格転嫁が難しくなる予測もあります。
2027年度:2%程度に回復
2027年度には、物価上昇率が再び2%程度に回復すると予想が出ています。
海外経済が緩やかな成長経路に復し国内経済も成長率を高めていく可能性や、労働市場の逼迫が続くなかで企業が賃金を引き上げて消費者物価も上昇することが背景にあります。
また企業や家計の予想物価上昇率が上昇し、価格設定や賃金交渉にも影響を与えると見られています。
まとめ:インフレ対策には「攻めと守り」の両立を

現在の物価高騰は一時的な現象にとどまらず、構造的な側面も持ち始めています。そのため企業や家庭がどう向き合うかが、今後の持続的な成長や生活の安定に直結する重要な課題になってきています。
インフレ対策には「攻め」と「守り」を両立させたインフレ対策が求められます。単にコストを抑えるだけでも、拡大路線に走るだけでも不十分です。
コスト管理とリスク回避で足元を固めながら、付加価値の創出や戦略的投資による未来に向けた攻めのチャンスと捉えて、バランスの取れた対応を心がけていきましょう。
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